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WTO農業交渉で国際パネル討論会開く (3/13)


 (社)国際農林業協力・交流協会(JAICAF)は3月13日、東京・虎ノ門パストラルで「ドーハ開発ラウンドと農業」をテーマにWTO農業交渉の国際パネル討論会を開いた。
 討論会には海外の農業者団体代表、途上国の農業ジャーナリストなど4人が出席した。
 インドのフィナンシャル・エクスプレス紙のアショック・B・シャルマ特別通信員兼農業論説委員は、WTOは多国籍企業の利益追求のためにあると途上国の農業者は不満を持ち、農村開発問題は貿易自由化だけが唯一の解決策ではないことを強調した。
 とくに非農産品分野について昨年末の香港閣僚宣言は「サービス部門で途上国は十二分に犠牲を払った。農業は被害者」と指摘し、その農業分野については国内助成の仕組みを複雑化させ議論を進展させず、「交渉官はとにかくマーケット・アクセスの議論から始める。それでは解決にならない。農業者の利益を守るところから交渉は出発しなければならない」などと話した。
 カナダ農業者連盟のマルヴィン・シャウフ第二副会長は、自国に輸出品目もあることから輸出補助金の撤廃を進めて市場開放を進めていくべきとしながらも、同時に重要品目も認めていくべきで「必要なものは守る」と、カナダにとっては国で供給を管理している品目をセンシティブ品目としていくことを政府に要求してきたと話した。

◆生産者の一層の組織化

 また、WTO交渉全体について「自国の農業を放棄していきつつあるのではないか。国によって社会コストが違っていることを無視し短絡的。受益者はモノを動かす人々であって作る人の利益になっていない。生産者が生産できるための政策が輸入国、輸出国ともに必要ではないか」と国家政策の重要性を強調した。
 フランス全国農業団体連合会のクロード・ソデ農産物・市場・国際関係担当部長は、貿易の自由化だけで農業は発展しないとし「交渉にはバランスが必要」と指摘した。とくに国内支持について、消費者が望む農業の多面的機能の発揮という社会的な役割を歪めないかたちで維持していくべきだとし、米国のような生産者への価格支持政策は是正されるべきだと話した。
 会場からは多国籍企業の利益主導で進められるWTO交渉についての農業者、農業団体の対応などについて質問も出た。
 問いかけに対して国際農業者連盟のディヴィッド・キング事務局長は「WTOはもっとも効率のいいものが生き残るという論理。しかし、各国政府は農業政策を立案すべきで、市場のなすがままにせよというのは政策ではない。自給的農業者を守ることにてこ入れするのは食料安保の強化につながり、保護がなければ自滅する。品目に対する助成も必要ではないか。国家が援助する一方、小規模農業者を組織化することも重要だ」などと指摘した。

(2006.3.15)



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