JA共済連(上原寿宰理事長)は、3月16日に全共連ビルで臨時総代会を開催し、「平成18年度のJA共済事業計画」を決定した。
18年度は、「絆の強化と仲間づくりによる磐石な事業基盤の構築に向けた取り組みの強化」「組合員・利用者一人ひとりに応じた生活総合保障の確立」を中長期展開方向とする「平成16年度から18年度JA共済3か年計画」の最終年度にあたり、この3か年計画の着実な実践、とりわけ組合員・利用者の満足度向上を目的とした事業実施体制の再構築の着実な実践に向けて、積極的な事業展開を行なっていくとしている。 |
◆一層の競争激化が見込まれる事業環境
JA共済と競合する保険業界の動向をみると、生保各社は死亡保障型商品が頭打ちとなり保有契約高の減少傾向に歯止めがかからないため、医療・介護保障など第三分野における商品の充実・強化をはかったり、個人年金保険の銀行窓販解禁を踏まえた商品投入を積極的に展開している。17年度上期業績では保険料収入が5年ぶりに増加傾向に転じるなど、業績回復へ向けた取り組みの成果が見え始めてきている。
損保各社は、16年度に自動車保険料がフリート契約の料率値引競争や等級進行によって伸び悩んだことから、17年度に各社が自動車保険に新商品を相次いで投入。中間決算では収入保険料が増収となる会社もあった。また、外資系損保を含めた自動車保険の通販も低価格志向の消費者を中心に着実に販売を伸ばしている。さらに、成長が期待される医療保険やがん保険など第三分野に対しても各社が積極的に商品を投入して業績の底上げをはかるとともに、人件費などの削減により事業費率の改善にも努めている。
簡易保険は、主力である貯蓄型養老保険が低金利の影響で商品訴求力が乏しくなっていることから、16年度は新契約高が前年対比90%、保有契約高が同96.3%と縮小傾向に歯止めがかからない状態となっている。そのため、簡保では定期付終身保険「ながいきくん」の販売に力を入れ、新契約保障額の10%を占めるまでに上昇させたが、依然として業績回復の兆しが見えないのが現状だ。
なお、昨年10月に郵政民営化関連法案が成立したことから、日本郵政公社は19年10月に解散。郵政3事業を分割のうえ簡保事業は民営化した事業会社に引き継がれることになった。
一方、JA共済についてみると、農家人口の急激な減少と高齢化による市場の縮小が懸念されるとともに、農政の転換やJAの経営改革にともなう支店・支所体制の再構築やJA職員の減少などが共済事業に大きな影響を与えることが懸念されている。さらに、前述した生損保・簡保とのいっそうの競争激化が見込まれている。
また、事業実績をみると、保有契約高が6年連続して減少。長期共済新契約は7年連続して目標達成しているものの、近年は生命共済の落ち込みが顕著になるなど大きな課題も抱えている。事業収支についても利差損の高止まりと付加収入の減少が将来的に懸念されるなど厳しい事業運営が見込まれている。
◆18年度の主要諸施策
こうしたことから現行3か年計画では、「JA共済の“強みの発揮による“絆の強化と仲間づくり”の積極的な展開」と「JA共済事業改革の着実な実践による事業力の強化」を重点取組事項として取り組んできている。18年度はこうした取り組みを進めるとともに、次期3か年計画への足がかりになる積極的な事業展開をはかるために以下のような諸施策を実践するとしている。
▼保障提供力の強化
医療共済の積極的な活用による生命共済の実績回復や対象者を明確にしたニューパートナー対策の展開。「あんしんDXスーパー」の活用等による自動車・自賠責共済の件数拡大・保障拡充等に取り組み、保有契約高の維持・拡大および付加収入管理の強化をはかる。
JA共済トレーナーの展開等によるLA・管理者・窓口担当者の育成・支援強化と推進サポート制度の本格実施による推進チャネルの強化、普及情報力の強化に向けたIT基盤の整備と活用促進等をはかるとともに、JA本体代理店を通じた共栄火災商品の提供による多様なニーズへの対応。
▼JA共済の事業実施体制再構築の着実な実践とJAの体制強化支援
事業量・契約者数の維持・拡大をはかるための競争力強化に向けて、LAを基軸とした推進体制の構築と一斉・窓口の各推進チャネルの強化。支所・支店における事務・保全機能の強化。JAに対するコンサルティングの実施やフォロー活動の徹底・強化を柱としたJA共済コンサルティングの着実な実践。引受センターの安定稼動や自動車事故処理の新たな機能分担への円滑な移行を図り、県本部におけるJA支援・指導機能、全国本部における固有機能の強化に取り組む。
▼契約者サービスの向上
契約者へのサービス向上に向けて、自動車事故時の現場急行サービスの円滑な導入や管轄外事故処理体制の見直しを行なうとともに、JA支所における知識・スキルの向上および事務処理の迅速化・利便性の向上を通じた窓口担当者対応力の強化。自然災害損害査定体制の強化に取り組む。
▼資金運用機能の強化と経営基盤の強化
共済資金の特性を踏まえ長期にわたり必要な収益の確実な獲得を第一義とした取組みを継続するが、利差損の高止まりや保有契約高の減少により収益が一層厳しくなることが想定されるのでより効率的な運用を行ない収益性向上に取り組む。
また、将来の利差損への対応と、巨大災害の発生に際しての支払担保力の確保に向け異常危険準備金の造成に取り組むとともに、JA・連合会を通じたコンプライアンス・リスク管理態勢や共済金支払適正化等への取組みをより一層強化することにより、JA共済事業の信頼性向上に努める。
システムの安定稼動や個人情報の漏洩防止の強化、システム経費の低コスト化に向け、JA共済ネットシステムのシステム基盤の再構築を実施する。 |