■地域生協では「担い手限定批判」が5割超す
(社)農業開発研修センター(会長理事:藤谷築次京大名誉教授)は市町村・JA・地域生協トップ層に対する品目横断的経営安定対策などについてのアンケート調査を実施、3月22日に結果を公表した。
19年産から導入される品目横断的経営安定対策の対象について、「営農意欲を持っている者は誰でも対象とすべき。面積や認定農業者かどうかで区別するのはおかしい」との回答がJAトップ層で43・2%、市町村トップ層で43・6%と4割を超えた。地域生協では52・8%に達している。
一方、「海外農業と競争していくためにも担い手限定は当然」と積極的に評価したのは、JAで9・9%、市町村で10・3%、地域生協で11・1%と1割程度に過ぎない。また、「農家がここまで分化してしまった以上、やむを得ない」という消極的支持は、JAで32・1%、市町村で20・6%だったが、この回答率を合わせても「担い手限定はおかしい」という批判的な回答のほうが上回った。
ただし、地域によって評価に差があるのも事実。兼業化が進んでいる「中間的農業地域」と「都市近郊地域」では、担い手限定に対する批判は5割前後と高い。しかし、農業の中心地域である「中核的農業地域」では、積極的な支持が16・2%で、消極的な支持と合わせると不支持を10%以上上回って45・9%となった。
■要件はもっと緩和すべき
同センターでは、中核的農業地域では、今回の品目横断的経営安定対策の実施によって、「現在の不足払い制度の実質的な継続がなされると受け止められているようだ」とみている。
また、担い手の要件に対する評価では「集落営農に経理の一元化・法人化計画などが求められたため制度に乗れない農家が出てくる。もっと要件を緩和すべき」がJAで29・6%、市町村で37・9%。「零細農家も集落営農で救われたのでまあまあ」という評価はJAで25・9%、市町村で20・2%と前者の回答率を下回り、今回決定された対象要件について、不満が多いことが分かった。
とくに「農家がここまで分化してしまった以上、担い手限定もやむを得ない」とする層でも、対象要件はもっと緩和すべきとの回答が多く、今回の対策を消極的に支持するトップ層でも対象要件については批判的であることが示された。
■資源保全策は大歓迎
これに対して「農地・水資源保全」活動に直接支払い制度が導入されることについては、「高く評価できる」、「まあまあ評価する」を合わせるとJAで46・9%、市町村で48・2%、地域生協で58・4%と高かった。一方、「まったく評価できない」、「評価とまではいかない」を合わせた回答率はJAで17・2%、市町村で20・9%だった。
ただし、「もうひとつイメージがわかないので評価のしようがない」という回答がJAで27・2%あるなど、具体的な仕組みが明らかでない段階での評価にとまどう回答も一定数あった。
評価できる理由でもっとも多かったのは市民も加わった「共同的な取り組みがあってはじめて生産者と消費者が一体感を共有できるから」が28・7%。「これまでタダ働きだった溝さらえなど社会的活動が正当に評価された」の18・4%を上回った。
逆にこの政策を評価できないとする理由としてもっとも多かったのは「品目横断的経営安定対策に乗れる担い手と乗れない担い手が生まれ、その不平等を埋める政策に思えるから」で21・9%を占めた。同センターではこの資源保全政策についても、担い手を限定する経営所得安定対策への批判が現れていると指摘している。
また、同政策の導入について基本的には評価しながらも「支援・助成額があまりにも少ないから」評価できないとする回答も2割あった。
農地・水資源の保全政策について、国は地方自治体にも国と同額の助成を求めているが、財政難を理由に導入地域の限定を検討する県などもあるとされ、現場からは不安の声もあがっている。同センターでは、今回の調査で資源保全政策の導入については基本的に、市町村、JAトップ層は「大歓迎」だが、一方で「これだけの助成額では本当の評価はできない、というのが本音ではないか」と分析している。
アンケートは昨年12月に実施。282市町村、81JA、36地域生協から回答が寄せられた。 |