昨年6月下旬に茨城県で発生が確認された高病原性鳥インフルエンザは、その後埼玉県の1件を含め41件の発生が確認され、約600万羽にものぼる鶏がとう汰されることになった。
なかでも茨城県内3農場で発生が確認されたイセファームの被害がもっとも大きかった。その被害は鶏250万羽、約85億円にのぼることが分かった。
これは本紙の取材にイセファームの親会社・イセ食品(株)が文書で回答し明らかになったもの。
これによると、イセグループの被害羽数は、家畜伝染病予防法にもとづく殺処分と「早期とう汰」を合わせて、約250万羽になるという。殺処分についてはすでに終わっている。一方、抗体陽性が確認されたが、ウィンドレス鶏舎で厳格な飼養管理がされていることから、殺処分はされずに「監視プログラム」下の鶏のとう汰(焼却処分)はまだ終わっていないという(イセではこれを「早期とう汰」といっている)。
また、出荷減少とそれにともなう負担増など波及効果を含めた経営的損失については、およそ85億円(1羽当たり3400円)と同社では試算している。
監視プログラム下の鶏については食用にすることも認められていたが、同社では「インフルエンザ問題発生以降、該当農場の廃鶏について食用処理は行っていない」というように、他の農場も含めて、食鳥処理場で受け入れられず焼却処分されているのが実態だ。
国は「鶏肉や鶏卵を食べることによって、ヒトに感染した例は、世界的に報告はなく、現在のところ、鶏肉や鶏卵を食べることによってヒトが感染することは考えられず、鶏肉・鶏卵は“安全”」と国民に説明しているにもかかわらず、農水省と厚労省とのコンセンサスがとれておらず、厚労省が管轄する食鳥処理場が受け入れなかったということのようだ。
本紙は、イセグループ3農場の鶏糞処理が1農場で行われていたことについても質問したが、「各監督官庁等から指導を受けながら対応」しているとの回答があった。農水省は「生糞での移動は認めないが、ウイルスは熱に弱いので鶏糞が発酵し完熟してから運搬するよう」指導したという。鶏糞はウイルスの巣ともいえるものであり、こうした鶏糞処理に疑問をもつ人が多いことを指摘しておきたい。
また、これからについて同社では、国や県・行政に対して▽被害農場に対するしかるべき補償、▽感染経路や動物衛生研究所による非公式検査の隠蔽問題を含めて原因の徹底究明、▽弱毒型ウイルスの防疫指針の整備などを要望している。
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