農林中金総合研究所は5月23日、2006度の実質GDP成長率をプラス2.8%と予測するなど07年度までの経済見通しを発表した。
5月19日に発表されたGDP速報では、今年1月から3月の経済成長率は前期比プラス0.5%と05年10〜12月期のプラス1.1%とくらべると数値では減速した。しかし、農林中金総研では民間消費・設備投資など民間最終需要が底堅く推移しており、輸出も成長を引っ張っているなどバランスのとれた成長プロセスは維持されていると評価。05年度の成長率がプラス3.0%と過去10年でもっとも高い伸びを達成したことからも、90年代後半の長期経済停滞状態からの脱却を裏付けているという。
また、1〜3月期の経済成長の要因を分析すると、内需依存度が0.5%、外需依存度がゼロであることから、景気回復初期段階で見られた「外需だけに依存した成長」ではなくなっていることが景気の現状だという。
こうした現状をふまえ、同総研は06年度については民間最終需要増の自律的回復と輸出増という2つの要因が好循環を生み出すことで潜在成長率を上回る成長が持続的に達成されると予想、06年度の実質GDP成長率をプラス2.8%と予測した。
今後の懸念材料と考えられるのは、財政金融政策で、所得税・住民税の定率減税の廃止や、消費税引引き上げの議論の活発化など。統計上は賃金が上昇し始めているとはいえ、実際にはそれほど高まっておらず、重税感が強調されると消費マインドに影響すると指摘する。また、金融政策はゼロ金利政策の解除に向かっており、利上げが行われれば内需動向に少なからずブレーキをかける可能性もあるという。そのほか、原油・非鉄金属など原料高騰がこの先も影響が出ないのかどうかも注目されるとする。
ただし、こうした懸念材料はあるものの06年度は「景気の天井(完全雇用天井)」に接近し、年末には失業率4%割れも予想されるという。その結果、07年に入ると潜在成長率以上で成長しつづける余力はなくなり、景気成熟による自律的な成長鈍化が見込まれ、07年度の経済成長率はプラス1.9%と減速すると予測している。
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