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生産性向上や地区活性化に貢献 土地改良事業実施地区の成果をみる


利根大堰から取水
利根大堰から取水

農水省が進める公共事業、土地改良事業(ほ場整備、用水整備等)の効果については、洪水被害軽減、生活環境整備、地域資産の保全などと並んで、農業生産や農業経営の向上が謳われている。このほど、埼玉県内で事業実施済みの地区を訪れその効果を見る機会を得た。

野菜中心の生産農家 植竹清さん

ナス畑をスプリンクラーで水まき
ナス畑をスプリンクラーで水まき

◆スプリンクラー設置しナスを育成

 深谷市在住の植竹清さんは、水田0.2ha、畑1.1ha(ナス0.1ha、ネギ0.7ha、その他スイカ、メロン等)を奥さんと2人で経営している。JAふかやそ菜部長と同時に荒川中部土地改良区の組合員でもある。深谷市は県内では降水量が少なく、植竹さんの住む大里地区では農業用水の確保が課題だった。昭和40年〜41年に「県営開拓地改良事業」が実施され、農業用水施設が整備された。植竹さんの畑の脇まで用水路が走るようになり、その用水を利用してナス畑(千両ナス)にスプリンクラーを設置し、水まきが常時行えるようになった。
 「用水施設により水の心配をせずにナス、ネギを始めいろいろな野菜類が生産できるようになった。ナスの場合、播種時に水が自由に得られるなど順調な生育が保証されるようになった。
 また、スプリンクラーにより頻繁に水を散布することでアブラムシなど害虫の駆除もできる」と、用水施設の効果を述べた。天気頼みではなく水の心配がなくなったので、野菜の種類も増やすことができ生産性も上がり、経営的にも楽になったと強調した。大里地区では、植竹さんと同様な例を見ることができる。

JA花園農産物直売所

にぎわう直売所
にぎわう直売所

◆新農業構造改善事業の補助で施設を建設

 深谷市花園地区(旧花園町)の関越道花園インター近くに位置するJA花園農産物直売所は、昭和58年3月にオープン。施設の建設は「新農業構造改善事業(補助率50%)」を利用して行った。花園地区は以前は養蚕が盛んであったが、化学繊維の台頭などで養蚕が衰え、それに変わるものとして直売所が考えられた。直売所については野菜生産部会、植木生産部会、役員、青年部、婦人部などで運営委員会が組織され運営を行い、管理はJAが行っている。
 当初は植木が中心だったが、次第に野菜、加工食品等が増えてきた。オープン1年目の売上げは1億4400万円。その後は順調に売上げを伸ばし、平成10年に10億円を突破した。ここ2、3年の売上げは11億2〜3000万円で推移している。さらなる売上げ増のために何が必要か、現在模索中。年間来場者の最高は68万5000名。昨年は約67万人が訪れた。1日の最高は5618名(レジ通過者)。売上げが1000万円を超えたこともたびたびある。道の駅『はなぞの』が隣接していることなどから来場者の9割が県外からとなっており、リピーターも多い。
 現在、植木・花き110名、野菜245名の生産者が登録されている。月の売上げが基準に達しない場合は一定期間出入り禁止など、生産者自ら自主ルールを作り、常に厳しい環境を作り出すようみんなで心がけている。
 「直売所の建設に際して、費用の半分が国から出たことは大きな意味があります。全額JAの自己資金で建設するということだったら直売所はできなかった。半分を国が面倒みてくれるというので、建設に踏み切れたところがある」と、当時を振り返って役員の一人は語った。また、「直売所が刺激となって、生産者の間に良い意味での競争があり、地区の活性化にもつながっている」と、直売所の効果も指摘した。

(有)中条農産サービス

車庫には大型農機が
車庫には大型農機が

◆作業受託規模100haめざす

 荒川左岸地区(熊谷市、妻沼町、南河原村)の495ha(田432ha、畑63ha)を、県営農村総合整備パイロット事業で整備した(昭和50年度〜平成2年度)。同地区内の農家5戸が昭和58年、農機の共同購入・共同利用を目的に利用組合を組織。当初9haの受託作業から始まり、現在水稲、麦、飼料用稲、合わせて約50haの作業受託を行っている。デンマーク製のトラクターなど各種大型農機を多数揃え、田植えや収穫作業を受託している。しかし、現在の受託規模では機械の稼働日数が少ないため、効率的な経営を行うには100ha程度まで受託規模を拡大したい、としている。また、麦わら焼却による煙害対策として、ロール化して堆肥化する、小麦の減農薬・減化学肥料栽培を進めるなど、環境にも配慮した取り組みを行っている。
 「当初は土地が集まらなくて、集落座談会などを回ってお願いした。しかし、今は後継者不足から貸し手が多く、大型機械が効率よく動けるところを選んで受託している。ほ場整備が終わっているため、田んぼや畑の1区画が比較的大きいので機械化の条件は良く土地を多く集積できれば、もっと効率的な経営ができると思う」と、(有)中条農産サービスの石原さんは今後の受託規模拡大に向け、抱負を語った。

◇  ◇  

ほ場整備など土地改良事業を実施した地区で、その後生活や生産にどのような影響を与え、どのような変化が起こったかを見てきた。3例とも事業実施は地区の活性化や生産者の生活向上にとって良い成果をもたらしている、との印象を受けた。しかし、訪れたのが埼玉県の熊谷市、深谷市など都市近郊であったため野菜販売などで、生産者にとってはもともと有利な条件を持っており、必ずしも土地改良事業の成果によるものとはいえない点もあるのではないだろうか。都市部から離れた過疎地域などで行われている土地改良事業の成果も注目される。

(2006.5.29)

 

 

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