米国でエタノール生産が激増していることを本紙は3月20日号「焦点」でレポートしたが、JA全中発行の「国際農業・食料レター」(5・6月)では、国家的プロジェクトとしてのエタノール対策に対するアメリカ農業界の期待は「熱狂的」と紹介している。
同レターは、エタノール対策は次期の米国農業法検討の主要な柱になる可能性があると指摘、チャンブリス上院農業委員長の「(次期農業法の検討に)いまだかつてない興奮を覚える」との発言を紹介している。
一方、とうもろこしのエタノール生産仕向けが急増するなか、米国内では畜産業界や異性化糖、食品業界にも警戒感が高まっているという。ただ、WTO農業交渉で国内支持の削減が迫られる米国にとって、エタノール生産の拡大が「エネルギー対策として大義名分を得た新たな補助金として
作用する可能性」を考えると米国農業界の現状と行方について把握することは重要だと指摘している。
米国ではとうもろこし需要に占める割合は06年には20%近くに達する見込み。一方、ブッシュ大統領が今年1月に打ち出した目標は、2025年までに中東由来の原油の75%以上を国内での再生可能燃料生産に置き換えるというもの。これをすべてエタノールで代替するとすれば現在の生産量の5倍強に拡大しなければならないと米国の再生産可能燃料協会(RFA)は試算しているという。
これをすべてとうもろこしでまかなうとすると現在のとうもろこし需要量のほとんどをエタノール生産に費やすことになり、将来的にとうもろこし需給が逼迫する大きな要因になり得ると同レターは指摘している。 とはいえ、米国ではエタノール生産振興策を連邦・州の各段階で積極的に実施。たとえば、商品金融公社(CCC)は、エタノール精製事業者が生産拡大をはかる場合、購入原料の数量に応じた助成を実施している。また、連邦レベルでは中小規模工場の経営を支援するため、生産量が一定規模以下の工場を対象に所得税額の控除を実施しているほか、地方レベルでは生産奨励金や工場運営コストへの補助、工場施設と敷地の固定資産税の長期減免、農業者が組合を形成したりエタノール事業への参入促進をはかるため、出資に対する税額控除などが実施されているという。
同レターは、とうもろこし由来のエタノール生産は「国家的規模で推進」されており、とくに州・地方自治体による雇用増進、失業対策などのための積極的な取り組みが目を引くと指摘している。
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