農業協同組合新聞 JACOM
   
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輸入手続き再開条件で合意
−違反再発の対応では玉虫色の決着 (6/20)


 日米両政府は6月20日、21日にかけて開いた米国産牛肉輸入問題の局長級テレビ会合で、輸入手続きの再開の条件で合意したが、メディアは一斉に「輸入再開で合意」と報道。これについて「輸入再開に至る手続きに合意したのであって、輸入再開に合意したのとは違う」と農水省などは指摘している。
 今年1月20日にせき柱付きの米国産牛肉が発見されて以来停止している日本向け輸出認定施設からの牛肉輸入について、日米双方が、今後、どういう措置を実施し、輸入手続きを始めるかについて合意したのだ、と強調する。
 今回の合意内容は、(1)対日輸出認定を受けている35施設すべてを事前調査、(2)農場や飼料工場の飼料給与実態の確認、(3)米国農務省が実施する抜き打ち査察に日本も同行、(4)輸入された製品について全箱検査も含めサンプル数を増やし水際検査を強化する、などだ。
 一方、米国側は認定施設が対日輸出プログラムを十分理解しているかなどの確認とともに、各施設が対日輸出できる「製品リスト」を作成することに合意した。このリストは日本側も保持し、水際の検査で活用して輸出条件に違反していないかどうかをつき合わせるという。
 事前の施設調査には厚労省から1チーム3人構成で3チームがあたる、農場と飼料工場での飼料給与実態については、農水省の専門家チームが行く。

■国民への説明終了前に判断も

 21日の記者会見では事前調査チームは24日にサンフランシスコに到着することが公表された。農水省などは輸入手続きの再開に向けて合意しただけというが、こうした対応をみると輸入再開に合意したとされても仕方ないのではないか。
 事前調査は26日にもスタートし35施設の調査には約1か月かかるという。その調査結果については、日本に持ち帰って一括して評価する。ただ、事前調査で不適合な施設が見つかればその段階で米国と必要な是正措置を確認して実施し、その是正状況を日本側が確認することもできることで合意はしている。
 日本に調査結果を持ち帰ってから、国民に対して説明会を開くという。ただし、意見交換会ではなくあくまで説明会と関係者は強調。また、調査結果をもとに輸入再開をするかどうかの評価は、こうした説明会が「すべて終了してから行うとは限らない」という。これも、輸入再開に合意したわけではない、という説明に説得力があるかどうか。
 また、今回の会談が予定より大幅に長引き2日にわたったのでは、米国側が再び違反が起きた場合の日本側の対応にこだわったからとされる。米国とすれば、今後、再発があっても全面輸入禁止はせず、問題を起こした施設からの輸入停止にとどめることを明文化させたかったようだ。しかし、文書では不適切な製品が発見された場合、「米国政府に連絡しつつ違反の性質に応じた適切な措置を講ずる」となっている。
 この文言について中川農相は会見で「万が一のことが起きたときに(米政府に)通報するというのはある意味でサービス。(その後の)作業は日本の法律で判断するということ」と述べた。ただし、1月20日に違反事例が発覚したことを受けて全面輸入禁止をしたことについて「前例ではない。次に起きたらその時の判断。あくまで日本の法律、規則で判断する」と語り、どう対応するのかは明らかではない。
 こうした玉虫色の合意がなされたのも、輸入再開わずか1か月でせき柱付き牛肉が発見されたことについて、その原因を実は明確に評価していないからではないか。農水省は違反事例の原因について、米国の安全確保システム全体に問題があったのか、それとも個別的、特異的なミスなのかを見極めるとしてきた。
 この点について、22日の食品安全委員会プリオン専門調査会で吉川座長は「プリン専門調査会の答申は対日輸出プログラムが守られることを前提として評価したもの。(1月の違反事例が)システム全体のエラーなのか、改善可能な個別的なエラーか、(政府はまだ)はっきりさせていない。消費者に明確に伝えるべきだ」と強調した。実際、農水省をはじめ政府から明確にそれが表明されないまま、輸入再開に向けた手続きが進められていく。
 中川農相は吉川座長の指摘について「重く受け止めなければならない」と語った。対応が注目される。

(2006.6.23)

 

 

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