農水省は、7月7日に、平成18年度病害虫発生予報第4号を発表した。
天候の1か月予報では、天気は北・東日本と西日本海側では、平年と同様に曇りや雨の日が多く、西日本太平洋側では平年と同様に、前半は曇りや雨の日が多く、後半は晴れの日が多いと予想されている。
平均気温は、南西諸島で高く、東日本と西日本で平年並みか高く、北日本は平年並みとなる見込み。
降水量は、東・西日本太平洋側で平年並みか多く、その他の地域は平年並みと予想されている。
日照時間は、平年並みに回復する見込み。
6月の日照不足の影響で、葉いもちや野菜の病害が発生しやすい状態が続いている。ほ場を見回る際には、早期発見に努め、発生初期からの防除を心がけることが必要。
害虫では、果樹カメムシ類が平年に比べて多く発生しているので、果樹園への飛来をみとめた場合には、直ちに薬剤散布をおこなう必要がある。
病害虫の防除に当たっては、天候の状況に注意しつつ、都道府県の発生予察情報に留意し、地域ごとの防除要否を見きわめて、適切な防除をおこなうことが必要。
5月29日に食品衛生法にもとづくポジティブリスト制度が施行されたことにより、農薬の適正使用の徹底に十分留意するよう、農水省は呼びかけている。
種類別の概要は、次のとおり。
〔稲〕
葉いもちの発生は、南関東の一部地域で「多い」、北海道、北関東、甲信および北九州の一部地域で「やや多い」と予想される。
これらの地域では、本年の6月中・下旬の天候がいもち病の感染に好適な条件となったことから、本田を注意深く見回り、葉いもちの早期発見に努めるとともに、発生がみとめられた場合には、直ちに薬剤を散布する。
窒素質肥料の施用量が多いと、本病の発生が助長されるので、過剰な施肥を避ける。葉いもち病班は、感染してから5〜10日後に出現するので、各都道府県の病害虫防除所等で発表している感染好適日の5〜10日後を見回り日の目安にする。
紋枯病の発生は、東北、北関東、東海および中国の一部地域で「やや多い」と予想される。この病害は、梅雨明け後に高温・多湿が続くと、発生が助長されるので、穂ばらみ後期に発生が多い場合は、薬剤を散布する。
セジロウンカの発生は、早期水稲では、四国および南九州の一部地域で「やや多い」、普通期水稲では、東海、近畿、中国、四国、および九州の一部地域で「やや多い」と予想される。
トビイロウンカの発生は、早期水稲と普通期の別なく、四国および南九州の一部地域で「やや多い」と予想される。本田内を注意深く観察し、水稲の株元に成虫および幼虫をみとめた場合は、各都道府県病害虫防除所等が発表している発生予察情報を参考にして、要防除水準以上の発生をみとめた場合は、薬剤を散布する。
斑点米カメムシ類の発生は、早期水稲では、南九州の一部地域で「多い」、東海および北九州の一部地域で「やや多い」と予想される。普通期水稲では、東北、北陸、東海、近畿および中国の一部地域で「やや多い」と予想される。
これらの地域では、水田畦畔や休耕田のイネ科雑草および水田周辺のイネ科牧草(イタリアンライグラス)の草刈りを稲の出穂15日前までにおこなうことが必要。
また、稲の出穂時期に草刈りをおこなうと、逆に水田内に当該カメムシ類を誘い込むことになるので、出穂時期前後の草刈りは避け、適期に薬剤を散布する。薬剤の散布時期については、当該カメムシ類の種類が地域により異なるので、都道府県病害虫防除所等で発表している発生予察情報を参考にする。
フタオビコヤガの発生は、北海道、北東北、北陸、東海および近畿の一部地域で「やや多い」と予想される。本田内の幼虫の発生状況を観察し、発生が多い場合は、薬剤を散布する。
〔野菜〕
(施設栽培)
先月同様、曇りや雨の日が多いため、湿度が上昇して病害が発生しやすい条件が続いている。
施設周辺に排水路を整備して、雨水が施設内に入らないように注意し、作物の株間の通風をはかるなど、多湿にならないように施設を管理する。また、病害の伝染源となる罹病葉や罹病果は施設外に除去し、土中に埋めるなど、確実に処分する。
まもなく栽培終期を迎える施設作物では、栽培終了後は必ず施設の蒸し込み処理をおこない、施設の土中に生息しているアザミウマ類およびコナジラミ類の蛹を殺虫する。
また、次作の育苗に当たっては、播種前に育苗施設内および周辺の雑草を除草して、ウイルス媒介虫の侵入防止対策として育苗施設の開口部に防虫ネットを設置する。
(露地栽培)
灰色かび病およびべと病の発生が多くなっている。ほ場の排水をはかり、かん水過多とならないように注意する。
ほ場観察をおこない、病害の早期発見に努める。伝染源となる罹病葉や罹病果は早めに除去し、土中深くに埋めるなど、適切に処分する。
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〔果樹〕
(果樹共通)
果樹カメムシ類の発生は、関東、近畿、中国、四国、および九州の一部地域で「多い」、東北、甲信、北陸、および東海の一部地域で「やや多い」と予想される。
今年になって、1都2府19県から注意報が発表されている。特に、今年は発生が多いので、カメムシ類の被害が多い園地や山林に隣接した園地では、園内の観察をきめ細かくおこない、飛来がみとめられた場合には、直ちに薬剤を散布する。
(かんきつ)
黒点病の発生は、四国の一部地域で「多い」、南関東、東海、四国および北九州の一部地域で「やや多い」と予想される。
伝染防止のため、枯れ枝は除去する。降雨が続くと、感染が拡大するので、降雨の合間を見て薬剤を散布する。薬剤の散布時期は、前回の薬剤散布から累積降雨量が200から250mmに達した時点を目安とする。降雨が少ない場合は、前回薬剤散布の1か月後を目安にする。
かいよう病の発生は、近畿、中国、四国、および九州の一部地域で「やや多い」と予想される。伝染源となる罹病葉および罹病枝は剪除して確実に園外に除去し、処分する。特に、風雨が強まることが予想される場合には、事前に薬剤を散布する。
(りんご)
黒星病の発生は、北海道および東北の一部地域で「やや多い」と予想される。伝染源となる罹病葉および罹病果の園外への除去に努める。
褐班病の発生は、東北および北陸の一部地域で「やや多い」と予想される。罹病葉が目立つ園地では、薬剤を散布する。
モモシンクイガの発生は、北海道および東北の一部地域で「やや多い」、キンモンホソガの発生は、北東北の一部地域で「やや多い」と予想される。発生が多い園地では、薬剤を散布する。
(なし)
黒班病の発生は、中国、および北九州の一部地域で「やや多い」と予想される。発生状況に注意して適期に薬剤を散布する。
黒星病の発生は、南関東、東海、中国および九州の一部地域で「多い」、南東北、北関東、北陸、近畿および南九州の一部地域で「やや多い」と予想される。
伝染源となる罹病葉、罹病果および罹病した新梢の園外への除去に努める。降雨が続くと感染が拡大するので、散布間隔が開き過ぎないように、降雨の合間を見て薬剤を散布する。
ナシヒメシンクイの発生は、北関東、北陸、中国および北九州の一部地域で「やや多い」と予想される。
発生動向に注意し、発生量に応じて薬剤を散布する。
(もも)
せん孔細菌病の発生は、南東北、甲信、東海、近畿および四国の一部地域で「やや多い」と予想される。本病は、降雨や強風により発生が助長される。昨年、多発した地域では、天候に注意し、降雨の合間を見て薬剤を散布する。また、罹病枝の除去に努める。
灰星病の発生は、南東北、東海、および四国の一部地域で「やや多い」と予想される。伝染源となる発病果の園外への除去に努める。
モモハモグリガの発生は、南東北、甲信、北陸および四国の一部地域で「やや多い」と予想される。モモハモグリガの幼虫は、葉の組織内を丸くうずを巻いたり、蛇行して食害する。葉にうず状や蛇行した食害痕が目立つ園地では、産卵後から若齢幼虫期をとらえた薬剤散布をおこなう。
(ぶどう)
晩腐病の発生は、甲信、北陸、中国および四国の一部地域で「やや多い」と予想される。本病は、降雨により発生が助長されるので、降雨の合間を見て、薬剤を散布する。
べと病の発生は、北関東、甲信、北陸、東海、近畿、四国および北九州の一部地域で「やや多い」と予想される。本病は降雨により発生が助長されるので、天候に注意して適期防除をする。
灰色かび病の発生は、北関東および北陸の一部地域で「やや多い」と予想される。通風をはかるなど、多湿にならないように園内を管理する。
(かき)
炭そ病の発生は、中国、四国および北九州の一部地域で「やや多い」と予想される。園内観察をこまめにおこない、罹病枝を除去する。果実および新梢での発生を抑えるため、発生状況に留意して、降雨の合間を見て薬剤を散布する。
うどんこ病の発生は、東海および近畿の一部地域で「やや多い」、落葉病の発生は、北関東および東海の一部地域で「やや多い」と予想される。昨年、多発した園地では、本病の伝染時期を迎えているので、薬剤を散布する。
灰色かび病の発生は、北陸および近畿の一部地域で「やや多い」と予想される。伝染源となる罹病果の園外への除去に努めるとともに、通風をはかるなど、多湿にならないよう、園内を管理する。
〔茶〕
炭そ病は、新芽の萌芽から開葉初期に輪班病は滴採または整枝直後に薬剤を散布する。
チャノコカクモンハマキおよびチャハマキは、地域の誘殺灯やフェロモントラップでの誘殺状況に注意して、適期に防除する。
チャノホソガ、チャノミドリヒメヨコバイ、チャノキイロアザミウマおよびツマグロアオカスミカメは、萌芽前に薬剤を散布する。
クワシロカイガラムシは、幼虫のふ化状況を観察し、ふ化最盛期に薬剤を散布する。
これから、天敵類の活動が活発になる時期を迎えるので、天敵への影響が小さい薬剤を選択するよう、心がける。
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