JA全農は7月27日の通常総代会で17年度決算を承認するとともに、「新たな事業体制・経営管理体制」を決定した。新たな体制では県本部別の収支均衡から、事業分野ごとに収支均衡を図る体制に移行し、統合全農としてJAとの実質事業2段制を実現する。今後、全農は19年度からの次期3か年計画のなかで具体化を図っていく。
総代会では、中川農林水産大臣からの特命で全農改革を担当している宮腰光寛農林水産副大臣が来賓としてあいさつ。「改革を着実に目に見える形で実現することが重要。議論ばかりではいけない。新生プランの担い手である全農が一丸となってほしい。総代は改革が失速しないよう叱咤激励を」などと厳しく改革を求めた。
また、JA全中の宮田勇会長は「地域重視型の事業部制改革、新生プランの実践で生産者、消費者双方の信頼に応えることを期待する。全中も支援していく」と期待を寄せた。
JA全農の裄V武治会長は「全農執行部は総力を上げて熱意に応えていく。一丸となって新しい日本農業を確立しよう」などとあいさつした。
◆マトリックス方式で事業
総代会で決定した「新たな事業体制・経営管理」は、新生プランを実現するための不可欠の体制と位置づけられている。
JA全農は、平成9年の総代会で「連合会統合の基本方針」を決定し、▽組合員が最大限のメリットを享受できる事業運営とJAの補完機能の効率的な発揮、▽組織2段、事業2段を実現する新しい連合会として再編し事業競争力の強化を図る、ことなどをめざしてきた。
その結果、これまでに36都府県との統合を実現し、支所の統廃合やシステムの統合などは実現してきている。しかし、県本部と全国本部との重複業務をなくすことや管理部門のスリム化などはまだ実現していないとしている。会員JAからも組織も事業も3段のままで「統合のメリットが見えない」、「統合しても旧全農、経済連の看板の掛け替えに過ぎない」という厳しい声も出されてきた。
こうしたことから、組合員に対する最大の奉仕とJAの負託に応えるため、全国一本化した統合全農としての機能発揮と、地域を重視した事業体制を構築し、「新生プラン」を実現する体制とすることにしたもの。具体的には本所(全国本部)は機能を特化、スリム化し、事業ごとに都府県本部や広域ブロック、またはJAへ経営資源と権限を配置していこうというもの。JAの視点に立った事業展開を可能な体制にすることをめざしている。
そのために、都府県本部での収支均衡制を見直し、事業単位と都府県本部単位を組み合わせた、事業・経営管理体制とする。
再編成される事業単位は「営農販売」、「米穀」、「園芸農産」、「生産資材」、「畜産」、「燃料・生活」の6事業。
この6事業ごとに、都府県本部と協議し事業計画を策定していく。
つまり、6つの事業を「縦串」とするなら、その縦串36都府県の各部門事業計画が「横串」となって積み上げることになる。言い換えれば「6(事業単位)×36(都府県本部単位)」のマス目ごとに事業の計画と目標達成に努力し、全体として目標を実現しようという、マトリックス(マス目)型の事業管理の導入をめざすといえる。
ただし、都府県本部の各事業実績を総計したときに、都府県本部全体の計画を上回る実績となった場合は、一定のルールのもとで特定の品目を対象にしたり、あるいは県内全体への何らかの対応で、そのメリットを都府県域で会員に還元できる仕組みとすることも方針となっている。
JA全農は、この新たな事業体制・経営管理体制の決定を受けて、27日の総代会後に「目に見える全農改革を加速化します」と題した文書を公表した。
そこでは▽生産者と消費者を安心で結ぶ懸け橋として、大胆な事業の「選択と集中」を進める、▽JAと一体となって集落営農組織を含む担い手対応を強化し、地域の特色を生かした元気な産地づくりを進める、▽生産資材価格を引き下げ、赤字事業の収支改善、事業管理費の削減について「数値目標」を設定し目に見える改革を進める、▽事業競争力をものさしとして子会社の再編強化を図る、を柱に次期3か年計画の策定の取り組むとしている。
総代会後に記者会見した関水賢司JA全農理事長は、事業の選択と集中について「歴史的に使命を終え、今は必要とされていない事業もある。現状の事業収支と会員の期待度を切り口に、局地的には撤退し、担い手対応に要員をシフトし経営構造の改革をしていかなければならない」と述べた。
また、生産資材引き下げの数値目標について、「3か年で肥料、農薬など分野別の引き下げ数値目標を打ち出す」と述べたほか、事業部ごとの事業計画策定では、畜産、園芸でそれぞれ販売会社が立ち上がることもふまえ、「子会社と連結して、事業部ごと事業計画を立てていく」とも述べた。
「目に見える改革」が求められているJA全農。関水理事長は「目に見える、とはJAから見ても目に見える改革、ということ」と今後の新生プラン実現に向けて改めて意欲を示した。
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