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生産者と連携した安全・安心をアピール −Aコープ中田店 (8/1)


来店は自転車や徒歩が多い
来店は自転車や徒歩が多い

 JA全農と(株)エーコープ関東など広域3社は5月17日、地元産・県内産・国内産の農畜産物の取扱を進める「精肉、生鮮野菜」の国産こだわり宣言を行った。宣言以前から国内産中心の品揃えを進めてきているAコープ店舗もあるが、こだわり宣言したことで地元産・県内産・国内産をアピールし、競合店との差別化をはかり、消費者の信頼を勝ち取ることができるか。エーコープ関東中田店の取り組みを取材した。

 Aコープ中田店(横浜市泉区)は横浜市営地下鉄中田駅から徒歩2〜3分の、住宅地に位置している。買い物客は半径1Km以内に住んでいる主婦が中心で、徒歩か自転車での来店が主流。17年度の売上げは対前年度99.1%の21億3000万円で、来客数は124万8000人。

◆「Aコープ」の日に特売で国産品などアピール

国産品をアピールする店内の幟
国産品をアピールする店内の幟

 中田店では全農とAコープ各社が共同で出した「国産こだわり宣言」と同時期の5月から毎月1日を『Aコープの日』に設定、国産品やAコープマーク品を中心に特売を実施し、国産品やAコープマーク品の浸透をはかっている。
 新聞の折り込みチラシや店頭のポスターなどを利用し『Aコープの日』を周知しており、回を重ねるごとにその効果が表れ、店の大きなイベントとして定着してきている。精肉や生鮮野菜の売り場を中心に国産品をアピールするポスターや幟などが掲げられ、客の目の高さに国産品を置くなど商品の見せ方も工夫しており、「国産こだわり宣言」を具体化する取り組みを進めている。
 中田店の近くには相鉄ローゼン中田店、生協の店、隣の立場駅周辺にはヨークマート、イトーヨーカドーなど中田店が商圏としている半径約1Km以内に多数のスーパーが営業しており、競合は激しい。
 こうした中で、(株)エーコープ関東は他店との違いを鮮明にし利用者の意志が反映される店づくりをめざして、一定規模以上の店舗で“Aコープ店舗利用者懇談会”を年4回開催している。中田店でも懇談会を行っており、お客6〜10名と、店長、本部社員が出席。Aコープマーク品に対する意見や要望、他店と比較した売価、品揃え、サービスなどについて、お客から率直な意見や感想を求めている。懇談会では、Aコープが国産品にこだわった販売をしていることを知らなかったと話す人がいて、PRの大切さを改め知らされた。
 また、お客を対象に首都圏(茨城県、埼玉県、神奈川県)各店で「Aコープ友の会」、北関東(群馬県)各店で「アグリクラブ」を組織。買い物の金額に応じてポイントがもらえ、一定ポイントが貯まると店内で使用できるお買い物券と交換できるサービスを行っている。

◆空きスペースがこだわりの証拠

生産者の写真が掲げられている生産者コーナー
生産者の写真が掲げられている
生産者コーナー

 Aコープが他のスーパーと違いを強調できるのは、農協の店としてJAや生産者との結びつきが強い点だ。その強みを生かして地元の生鮮野菜の品揃えを充実させ、地元産を核に、県産、国内産をアピールしている。
 地元産の取り組みである生産者コーナーは、地元の生産者9名が供給する野菜と、地元JAよこはまから仕入れた野菜を並べている。JAよこはまから仕入れる野菜は、9名の生産者の供給だけでは品揃えができないものをカバーする補完的な役割で、目玉は生産者9名の持ち込む地元産の野菜だ。
 生産者は朝採り野菜をコンテナで持ち込む。お店は、定められた産直野菜手数料をのせて、バラ、パック、袋詰等にして生産者直売コーナーで、生産者の名前で販売する。売り切れたら棚は空けておく。「店にすれば貴重なスペースで、別の商品を置けば売上げにつながる可能性がある。しかし、あえて空けておくことで新鮮な地元産野菜をお客様にアピールし、地元産にこだわる店の姿勢を理解してもらえたら」と、担当者は語る。お客にも店側の姿勢が伝わり、一定の理解は得られているのではないかという。
 昨年秋、生産者と消費者が顔を合わせて信頼関係作り、安全・安心な農産物に対する理解を深めるために、農業体験ツアーを行い、実際に農作業を体験してもらった。お客に参加を呼びかけ、農産物の仕入れで付き合いのあるJA長野をバスで訪れた。「楽しかった。また実施してほしい」の声があり、「どこで、誰が作っているのか分かった」など参加者からは好評であった。店としてはできるだけ多くの産地と交流したいが、予算等の関係もあり今年度については現在検討中。

◆最大のサービスは安全・安心

 利用者懇談会、ポイントカード、生産者との交流などは、最近はAコープだけでなくスーパーや生協、量販店でも取り組まれている。特に最近は、各スーパーとも生産者からのメッセージなどを売場に張り出すなど、顔の見える産直の取り組みを強めてきており、Aコープの独自性がアピールし難くなっている。
 そのような状況の中、独自性を出すとすれば「地元産、県産、国内産に徹底してこだわることだと思う。売り切れた地元産野菜のコーナーは、そのまま空けておく。毎日新鮮で安全・安心な野菜をお買い求め頂くための取り組みである」と、エーコープ関東の営業企画部次長八木下一雄氏は語る。「食べ物を売る側として客への最大のサービスは『安全・安心』だ。信頼していない人にいくら安全だと言われても、安心できない。だから、店が地域のお客様に信頼されることが大切だ」と、店とお客の信頼関係を築き上げることの重要性を訴える。
 また、他店では5個、10個入りといった購入単位が大きい商品でも、「我々は1個から売る。必要なら一日に何回でもお店に来てもらえる」ような、家庭の冷蔵庫のような役割を地域で果たしていきたいとも語る。
 拠点事業改革の中で、Aコープ事業の収支改善が強く求められている。年間124万8000人の客で、売上げが21億3000万円、客1人あたりの単価は約1700円になる。中田店で取り組まれている地元産へのこだわりは、生産者コーナーの空きスペースが象徴するように徹底して行うことで徐々に消費者に浸透し、安全・安心にこだわった店の姿勢が理解されるのではないか。売上げを伸ばすためには客数を増やすか1人あたりの単価を上げる必要があるが、どちらにより焦点をあてた取り組みを行うかが今後の課題ではないだろうか。

(2006.8.1)

 

 

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