(社)家の光協会と家の光文化賞農協懇話会主催により、「文化と協同の力で10年後の元気なJAづくり」をスローガンに「家の光文化賞JAトップフォーラム2006」が8月3日、ホテルグランドパレス(東京都千代田区)で開かれた。
同フォーラムは、組合員や地域住民にとってかけがえのないJAであるためには教育文化活動の展開とその強化が欠かせないとの認識で、地域に貢献する教育文化活動の具体的な実践事例を学び、家の光事業の機能発揮と役割について共同研究し、10年後も地域に輝くJAをめざすため、さまざまな取り組みの可能性を探ることを目的に開かれている。全国各地のJAの組合長をはじめ役職員など約220名が集まった。
◆教育文化活動取り組みの強化が必要
|
(上から)池端昭夫会長・坂野百合勝氏・山本昌之専務理事 |
「先の第23回JA全国大会では、『協同活動の強化による組織基盤の拡充と地域の活性化』が決議され、間近に迫った第24回大会でもこの課題解決に向けたさらなる取り組みの強化が提唱されている。
本格的な広域JA時代を迎え、高齢化等により組合員意識が変化するなか、今後の強固なJA組織基盤づくりに向けて、「組合員意識の育成や地域社会に貢献するJAをめざし、教育文化活動取り組みの強化が求められている」と、池端昭夫会長は挨拶の中で日々の教育文化活動の実践が重要であると強調した。
来賓の全中前澤正一常務は、「今、農政のみならず日本は大きな転換点にさしかかっている。市場原理主義という経済合理性を中心とする方針が明確になってきているが、暮らしの中でお金には換えられないさまざまな協同活動の輪を広げ、この市場原理主義の行き過ぎを正さなければならない。市場原理主義の行き過ぎは、コスト面を重要視し最終的には人間性の否定につながるのではないか。JAグループが行っている事業や生産活動などは、協同で行う活動でありその対極にあるものと確信している」と、人と自然との共生、人と人の共存という協同原理が今こそ求められていると訴えた。
協同組合経営戦略フォーラム代表の坂野百合勝氏は、JAが広域化の時代に入り地域に信頼されるためJAが機能発揮するには、「JAの求心力、組合員の結集力強化が必要」であり、10年後を見据え地域で輝くJAとなることが求められていると述べた。また、「JAの現場では、自分の目の前のことしか分からない、分かろうとしない職員の社員化・作業員化現象が見られる。これはJAにビジョンがないからで、ここに集まった役職員のみなさんに考えてもらいたい」と、人、組織、地域を元気にするJAづくりに取り組んでほしいと要望した。各自が夢と目標を持って仕事に取り組むならばあえてコンプライアンスなどと言う必要はないとの発言には、参加者の多くがうなずいていた。
主催者からの提言として家の光協会山本昌之専務は、「1999年策定の家の光事業基本構想では、(1)農村文化の振興、(2)農協運動の活性化、(3)出版文化団体としての社会的活動」の3つを協会が果たすべき役割としてあげ、▽人の元気づくり、▽組織の元気づくり、▽地域の元気づくりを家の光事業のコンセプトとしていると説明。事業、組合員、地域をつなぐ役割を果たすため、生活文化活動が必要だと訴え、地域、JAとともにとくに次世代を育てる取り組みを強化すべきだと述べた。
◆地域とのつながり強化に向けた取り組みを報告
実践報告では、JAいわて中央の長澤壽一氏、JA遠州中央鳥山昭好氏、JAえひめ南林正照る氏の3氏が、各JAで実践している取り組みを語った(別掲載)
JAいわて中央(岩手県)長澤壽一代表理事組合長
13年産から安全・安心を合言葉に減農薬米栽培に管内全農家が取り組み環境保全型農業の推進、売り切る販売事業を経営の基本として長期安定取引の確立に努めている。組合員とJAの信頼関係を深めることを目的に農家組合員支援担当職員の配置、食と農業への関心を深め地域に根ざした食育教育などを実施している。また、▽地産地消と学校給食の取り組み、▽学童農園と地域の子ども達との交流、などを通じて地域への文化的・社会的貢献を果たしている。「つねに感性を磨く人であれ」、「つねに当事者意識を持つ人であれ」、「つねに偏りのないフェアな人であれ」、をJAの役職員像として健全なJA経営をめざす。
JA遠州中央(静岡県)鳥山昭好経営管理委員会会長
「農業を通じて住みよい社会と穏やかで潤いのある生活を、地域の人々とともに育み高めつづける」を基本理念として、組合員および地域社会への最大の奉仕をJA組織活動の原点に、さまざまな組織改革や事業改革を実施している。また、家の光事業など教育文化活動の実践を通して組合員の生活向上にも努めている。地域から組合を支えていくため200名で構成する『地区協力委員会』を設置し、農業体験学習など地域とともに歩むJAの具体的活動を実践している。農業振興拠点の整備と省力生産体制の確立などを通じ、担い手育成のための営農事業を強化し、地域農業の振興に取り組む。
JAえひめ南(愛媛県)林正照代表理事組合長
「食料」「水・環境」「心」「女性」がこれからのキーワードで、JAえひめ南は、人(人間)を愛し、組織を信じ、命の糧(農業)を守り育むことを第一と考えている。自然にやさしく、地域の人たちと協同し、心豊かな明日を分かち合っていきたい。また、ミカン農家の高齢化や後継者不足が深刻化するなど、待ったなしの担い手対策に取り組むには行政との連携が地域農業の振興が欠かせないことや、家庭内で決定権を握っている女性のパワーをJAが結集して、地域を盛り上げる取り組みを強めていく。JAが地域の活性化の中心となるためには、まずJAが活性化していなければならない。
|
|
(左から)長澤壽一JAいわて中央代表理事組合長・鳥山昭好JA遠州中央経営管理委員会会長・林正照JAえひめ南代表理事組合長 |
◆女性役員数の増大がJAを変える始まりのひとつ
|
川勝平太氏 |
川勝平太国際日本文化研究センター教授は提言のなかでJA組織を活性化するためには、「JAは親が組合員であれば子どもは慣習的に組合員になる。生協のように、入脱会が頻繁に自由にできる組織でなければ緊張感に欠け、そのことが組織の活性化を奪っている」と、JAの特殊性が組織に緊張感をもたらさない原因のひとつだと指摘。また、「農業に従事しているのは女性が多いのに、JAの役員に女性が少ない。役員の半分近くが女性でもおかしくない」と、女性の参加が少ない会場を見回し、JAが変わるために女性役員を増やすなどすべきことは多いと述べた、
今年のフォーラムは、「協同活動の強化による組織基盤の拡充と地域の活性化」について、10月に開催されるJA全国大会でもこの課題解決に向けた更なる取り組みの強化が提唱されていることから、JAが地域のなかでどのような役割を果たすべきかに言及する発言が多かった。高齢化、過疎化が進む農村で、農業を通し地域社会を守る役割がJAには今以上に期待される。
|