農水省は石油類に大きく依存しない施設園芸の実現をめざし、トリジェネレーションシステム(※)や小型水力発電システムを利用した温室・集出荷施設等のモデル事業を実施するために来年度予算要求をしている。
原油価格の高騰が続くなか、施設園芸では燃料のA重油の値上がりなどで生産コストが高騰し経営の圧迫を招いている。モデル事業ではトリジェネレーションシステムや小型水力発電システムを導入して作り出された熱や電気を、温室、集出荷所の照明や冷暖房に利用する。
トリジェネレーションシステムでは、A重油に変わる燃料として天然ガス、家畜ふん尿等の発酵で生じたメタンガス等のバイオマスエネルギーを使用し、熱や電気とともに発生した二酸化炭素を温室内に導き、植物の光合成の促進に利用する。
また、小型水力発電システムでは、農業用水路に設置した小型水力発電機で発電、温室の照明や冷暖房などに使用する。その他、電気自動車による物流も考えており、生産・物流の両面から、施設園芸のコスト削減をめざす。
モデル事業は19年度から3ヵ年実施し、A重油等の低減効果を検証すると同時に、それらシステムの導入指針の作成を行う。モデル事業は、個々の施設を対象に実施するのではなく、ある程度施設が固まって存在する地区で面的な整備として実施する。トリジェネレーションシステムで1地区、小型水力発電システムで1地区、計2地区の採択を予定している。
このモデル事業は、地区数も少なく検証に3年かけるなど原油高騰で苦しい経営を強いられている生産者にとって即効性のあるものとは言い難いが、「将来、石油類に大きく依存しない施設園芸のシステムを作り上げることができれば、コスト低減につながり生産者の利益になる」と農水省では考えている。
※トリジェネレーションシステム
燃料を燃やして発電を行うとともに、発生する熱を利用するものを「コージェネレーション(電気と熱の2要素利用)」というが、さらに発電時に発生する二酸化炭素も利用するシステムにこと。3要素を利用するので、トリ(3つ)と命名。
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