昨年6月下旬から12月下旬までに、茨城県(40例)と埼玉県(1例)で発生した弱毒タイプ・H5N2亜型鳥インフルエンザについての感染経路究明チーム(寺門誠致座長)の報告書がこのほどまとめられた。
これによると「感染源・感染経路を特定するための有力な情報や根拠を得ることはできなかった」(同報告「はじめに」)が、「今回の分離株が中米で分離された」ウイルスと近縁であることから「中米由来と考えられる」とした。
そのうえで感染経路について、野鳥・渡り鳥の可能性については、中米から日本に直接飛来する渡り鳥はおらず可能性は極めて低い。また「今回のウイルスは鶏に対する親和性が高く、アイガモに感染性がない」ことから、野鳥間で感染が繰り返されたとは考えられないこと。発生が茨城県南部に限られていたことから、「自然界における鳥インフルエンザの自然宿主の感染サイクルから鶏群に侵入したとは考えにくい」としている。
また、輸入鳥類や輸入家きん肉を介した可能性についても、鳥インフルエンザ発生国からの生鮮鶏肉、生きた家きん類の輸入が停止されており、「可能性はほとんどない」とした。
一部で報道された「バイオテロ」についても、弱毒タイプであることなどからその可能性は低いとした。
また、発生農場の従業員が中米や東南アジアへ旅行し、知らずにウイルスを持ち込んだ可能性についても「渡航先での農場への立ち入りがあったことは確認されていない」と否定した。
そのうえで「今回分離されたウイルスが、2000年から2002年にかけて、中米で分離された株と遺伝的相同性が高いことから、それら中米由来株で作成された未承認ワクチン又はウイルスそのものが、不法に持ち込まれて使用されたことも可能性の一つとして挙げざるを得ない」と、昨年10月の「中間報告」と同様、人為的な要因によることを示唆した。
昨年の鳥インフルエンザは茨城・埼玉の41農場で発生が確認され、家畜伝染予防法に基づいて殺処分された鶏が38農場約336万羽、自主的に淘汰された鶏が8農場約242万羽と約580万羽の鶏が犠牲となり、その経済的な損失ははかりしれないものがある。
今年4月末までに一連の防疫措置が完了し、7月末には、国際的にも清浄国に復帰したが、世界的に見れば鳥インフルエンザは依然まん延しており、三度、日本で発生しないという保障は何もない。農水省では「防疫指針」の見直しも検討するようだが、ワクチンの使用も含めて、生産者ともよく協議して、鳥インフルエンザの侵入防止や発生した場合の早期の対策についてより効果的な防疫対策をとる必要がある。
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