農業協同組合新聞 JACOM
   
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第24回JA全国大会主要分科会レポート
組合員加入の促進と組織の活性化 −第7分科会
地域に必要なJAめざし協同活動のメリット示す


◆遅れが目立つ組織活性化議論

 コーディネーターの北川太一福井県立大学助教授は冒頭、「前23回大会議案の柱のなかにも、今回取り上げられたのとほぼ同じ内容の『協同活動の強化による組織基盤の拡充と地域の活性化』が盛り込まれている。しかし、 “安全・安心な農産物の提供”、“経済事業改革”などと比べてあまり議論が進んでいないという印象がある」と問題提起し、「経済事業改革が進むなどしてそれなりに経営の安定が得られたと思ったら、JAは協同組合ではなくなっていた」という事態は避けなければならず、今大会の柱の一つである『安心して暮らせる豊かな地域社会の実現と地域貢献』を果たすために、「JAの組織・事業基盤づくりが問われており、報告される先進事例に学び、議論を深めることが大切」と語った。
 また、「組織活性化をどう進めたらよいかなどというマニュアルはなく、それぞれのJAが地域の実情を点検しながら、役職員一人ひとりが知恵を出し合って解決すべき問題」と、3名のパネリストの報告から共通の課題なり、取組み方策を見つけてほしいと強調した。

◆一人ひとりが参加し活動するのが基本

 望月直道JA松本ハイランド専務理事は、「集落内で協同活動を行う単位として約60戸程度の農家組合、その下で日常的な活動を行う1戸〜15戸程度を“班”としてまとめている」と、組合員組織の特徴を説明。「16年度〜18年度の中期計画で、女性や30代〜40代の働き盛り世代の組合加入を促進し、組織基盤強化などをめざした。また、地域や集落の結束を固め、地域ごとの課題を解決することなどを狙いとして、17年度から『モデル農家組合活動』をスタートさせた。健康講座などの健康管理活動、地産地消の取組みなどを日常的に行い、世代を超えた幅広い参加がある。地域の中で中心となって協同活動を行う人をいかに育てていくのかが大きな課題だ」と、地域の中での協同活動の重要性を強調した。また、「組合員一人ひとりが協同活動に参加することが組織活動の基本だ」と、JAでの経験を語った。
 「戦後復興で食料増産の時代に20代であった人たちが、その後一貫して農協を引っ張ってきた。我々は、その人たちに頼り過ぎたのではないか。組織基盤の弱体化の一因は、そんなところに原因があるような気がする」と、正組合員の減少や農家組合員の世代交代が進むJA福岡市の現状を語る岩子幹男常務。「管内人口約100万人のうち組合員数は約2万人。市街化の進んだ福岡市の中で、農協組織とはいえ農業だけでまとまるのは困難な現実があり、組合員になることがあたりまえの地域とはかなり状況が違う。支所を活動単位とし、農業だけでなく『彼岸花の里づくり』など地域全体で取り組めるサークル的な活動で住民を巻き込み、地域の活性化をはかっている。組合員に対するメリット還元に関しては、「組合員になることがメリットだ」と強調している。岩子氏は組合員加入を勧める時に、JAにかかわりを持ってメリットを実感してほしいと訴えている。
 青年部の立場から、山下孝治JA島根青年連盟委員長が報告した。「現在、全国の盟友数7万3000人から10万人をめざす、『JA青年仲間づくり運動』を進めている」。青年組織は、日本農業の担い手であると同時に、JAの後継者でもあり、JAが地域にとって必要な存在であるためには、担い手を組織化し、組合員の声を事業運営に反映させることが不可欠だ、と強調した。JA島根青年連盟は昨年11月、今後の青年組織活動の活性化をめざして島根県青年組織研究会を立ち上げた。県下全11JAのうち青年組織のある9JAからメンバーを出し、4Hクラブ等との関係、JA青年組織を知ってもらうためなど、若手農業者の加入促進などを行っている。また、青年部の位置づけについても、「青年部がJAの後継者であるならば、JAの中で果たす役割などもう一度明確にすることが必要との声が多い。一方、青年部の独自性が発揮できていない、もういらないのではとの声も一部にある」と語った。「農業・農村の諸課題を地域社会に問いかけると同時に、食と農の魅力をもっとアピールする」ことが、青年活動の活性化にとっては必要とも。

◆組合加入し活動することがメリット

 会場からは、「農家組合、班についてもう少し具体的に知りたい(JA松本ハイランド)」、「支所単位の活動内容について(JA福岡市)」、「青年組織が対象としているのは農業後継者か、または組合員後継者か(JA島根青年連盟)」などの質問があった。それに対しパネリストからは、「毎月定例会議を開き、JAからの連絡事項等を検討してもらったり、地域の要望をJAに上げてもらったりしている」、「支所運営委員会を支所ごとに組織し、行動計画を策定するなど支所、地域の活動の中心となって支えている」、「以前は農業後継者を対象としていたが、今は組合員というよりはJAの後継者と考えている」などの解答があった。時間の関係でかなり質問数が制約されたが、熱心に聞き入る参加者の表情から関心の高さが伺えた。
 北川助教授はパネリストの報告から、
(1)加入促進の問題。(どのような人をターゲットに加入促進を進めるのか)
(2)組合員組織は協同活動を行いJA運営に対して意思反映をするという、組合員組織の仕組みの問題。
(3)青年部、女性部組織のあり方やJAでの位置づけ。
 以上、問題点を3つに整理し、参加者全員が共有すべき課題として今後議論を深める必要があるとした。「地域の中には農家ではないけれど、食や農業に関心を持っている人がいるはずで、JAはそのような人をJAに巻き込む工夫が足りないのではないか。―協同組合は組合員にメリットを与える組織だ、しかしそれが不十分だ―と言って、農協批判をする人たちがいる。組合員加入の促進と組織活性化を進める時に、加入メリットばかりを強調することはそのような農協批判と同じ土俵に立つことになるのではないか。協同組合は協同活動の中に事業や経営があり、組合に加入しともに協同活動することがメリットだ」と分科会の討議を総括した。

(2006.10.24)



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