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イネ資源のバイオエネルギーで地域貢献 −JA全農 (12/4)


 (社)農林水産先端技術産業振興センター主催による、「バイオマス資源としてのイネの可能性に関するシンポジウム」が12月4日、石垣記念ホール(港区赤坂 三会堂ビル9階)で開催された。
 『バイオマス・ニッポン総合戦略』が平成14年12月に閣議決定され、バイオマスエネルギーの原料としてイネの可能性もいろいろな角度から議論されるようになってきた。このシンポジウムは、そのようなイネの可能性を技術的・経済的視点から検証する目的で開かれた。会場には主催者の予想を超える200人以上の人が集まり、関心の高さをうかがわせた。
 農水省の末松広行環境政策課長は、「食料自給率が40%を切っている現状で、米を食べ物ではなく燃料にするとはなにごとかというお叱りも受けます。しかし、今後人口が減少し高齢化も進めば食料消費は減ると予想される。耕作放棄地をこれ以上増やさないためにも、耕地を食料生産にだけでなく、飼料やエネルギー生産のためにも使うべき」と、バイオエネルギー生産の意義を強調した。また、生産性の高い水田の確保を第一に考え、イネを始めどのような物を利用してバイオマスエネルギーを得るか、「地域の独自性を大切にしながら支援していきたい」、とも語った。

◆農業の生産基盤を守り、地域産業を創出

全農の取組みを報告する小池部長
全農の取組みを報告する小池部長

 小池一平JA全農営農総合対策部長は、全農がバイオマスエネルギー生産に取組む理由として「日本農業の生産基盤を守りたいとの思いと、地域産業を創出し定住条件を整えるなど地域社会に対する貢献、担い手の規模拡大に寄与することなど」、「耕作放棄地が増え耕地の荒廃が進んでいるが、これに対処するためにもイネを原料としたバイオエネルギーという発想があっても良いのではないか、また、転作で麦・大豆を栽培しているが、米作を行う方が自然だ」ということなどをあげた。
 バイオエタノールの実用化に向けて全農は新潟県・JAにいがた南蒲で昨年、生産者への原料イネ生産やエタノール混合ガソリン利用の意向などを調査した。本年5月に原料イネとして北陸193号を83アール作付けし、約900Kgを収穫した。超多収穫米であることや、主要銘柄の「コシヒカリ」に比べ田植え、登熟期、収穫などすべて10日前後遅れているため効率的な生産ができることが確認できた、としている。
 エタノール生産プラントの規模は当面、年間1万5000キロリットルをめざし、原料米は玄米で20円/Kgが採算ベース。エタノールを自動車用燃料とするだけでなく、発酵残渣を配合飼料の原料とするなど、多用途の利用も採算を取るためには必要になってくる。発酵技術、プラント製造技術など個々の技術はすでに確立されているが、エタノール製造プラントのトータルの技術は未知で、これから作り上げていかなければならないという。

◆原料イネの安定的・継続的な供給など課題も多い

 エタノール製造プラントはエネルギー多消費型のプラントで、全農の試算によるとエタノールが100円/リットルで製造できたとしても投入したエネルギーの原価割れになることが予想されている。その他、原料イネの安定的、継続的な供給ができるか、行政の支援があるかなどの問題もある。「イネを原料にエタノール生産を行うことは採算ベースで考えると難しい課題が突きつけられている。しかし、営農と生活を支援し元気な産地づくりに取組むといった、経営理念に沿った事業で、前向きに取組みたい」と、決意を述べた。

(2006.12.11)



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