農業協同組合新聞 JACOM
   
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実践事例から学び確実な取組みを
−地域水田農業ビジョン実践強化全国大会 (12/12)


 JA全中は12月12日、虎ノ門パストラルで「地域水田農業ビジョン」実践強化全国大会を開催。全国から200名を上回るJA役職員等が集まった。

◆生産調整の厳格な実施が重要

情勢報告する冨士常務
情勢報告する冨士常務

 廣瀬竹造全中水田農業対策本部委員会委員長は、「19年から始まる経営所得安定対策に向けて認定農業者2万4646経営体、集落営農3054経営体が加入申請を行った。麦については昨年の作付面積のおおむね90%がカバーできた」と現在の状況を報告し、本集会で報告されるビジョン策定・実践の事例から学び、「確実な取り組みを明日からでも実践してほしい」と、地域自らが水田農業の将来の方向を描く大会の狙いを強調した。
 取組み事例として、JA庄内みどり担い手対策室次長荘司眞一氏、JAグリーン近江営農事業部長大林茂松氏、JA都城農産課長重富保氏の三名が、要旨次のような報告をした。

◆荘司眞一氏「全集落の集落農業ビジョン策定をめざして」

 農産物の販売額は以前は200億円を超えていたが、17年度は約150億円。うち米穀が107億円と、米のウエイトが高い。水稲作付面積9400ha(加工米除く)、生産調整面積3400ha(うち大豆1780ha)。17年7月に「担い手育成・確保推進本部」が地元酒田市、遊佐町連携のもと設置され、本格的な推進体制が整った。また、推進本部の下に、旧町村単位(16地区)で『地区農業振興協議会』が組織され、JAの役員、支店長、営農関係職員が専門推進委員となり、集落営農組織や認定農業者などの担い手、地域住民、米生産農家に対して、農地の利用調整などを推進している。
 11月末現在の担い手育成確保の状況は、全319集落のうち、利用改善団体設立計画があるのは287集落(114団体)、集落営農の組織化では、289集落で方針が固まり、残り30集落については、これから検討する。JAでは、集落営農と認定農業者が共存している姿を描いている。管内全域がほぼ平坦地であるため、個々の集落だけでなく数集落をまとめた広域的な集落営農の組織化もめざしている。今後は、米中心から脱却し、園芸などにも力を入れ、多様性を持った農業を展開していきたい。

◆大林茂松氏「JA出資法人など多様な担い手作りの推進」

 JAグリーン近江は、水田面積1万1500ha、うち作付面積は8500ha。農家数は9800戸。安全・安心な米づくり、担い手育成、売りきれる米づくり、の三つを地域農業戦略の中で挑戦課題としてあげ、集落座談会など実施に向け話し合いを行っている。
 地域では担い手の弱体化が目立ち、集落営農の重要性が増している。今後いかに担い手としての集落営農組織を育てるかが大きな課題となっているが、JAはその課題の解決に向けて『JA参加型法人・(株)グリーンサポート』を今年8月に設立した。農家が出資し、「JAグリーン農地保有合理化法人」を通じて、農地の利用権設定を行う。当面は麦・大豆中心だが、今後は水稲の生産も行う。作業を集落に委託するため、自分達の集落の農地で、自分達が作業を行う。「法人に参加して経理などを覚えてもらい、3年後をメドに集落営農組織として独立してほしい」と、JAでは希望している。

◆重富保氏「広域JAを単位とした推進体制づくりと産地づくりの推進」

 JA内に『都城地域農業振興センター』を設置し、ビジョン素案の検討を進め、素案については、「都城・北諸県地域米政策連絡協議会」で協議し、作物の振興、土地利用の形態、担い手の育成、を柱とする
都城・北諸県地域水田農業の基本方針を決めた。市町の枠を超えた都城・北諸県地域で水田営農を進めるため、1市15町(現在は1市1町)にまたがる協議会を設立した(現在は都城市13、三股町1、計14協議会)。目標数量配分、転作受付、経理などのシステムデータ入力など主な事務をJA,市町、普及センター等で分担している。事務の効率化を図るため、JAから9名が都城市、三股町に出向してシステムデータ入力を行っており、将来はワンフロアー化をめざす。
 売れる米作りに向けては、主力品種の「ヒノヒカリ」が、16年産、17年産と登熟期の高温障害で品質が落ちたため、今年度は田植えを2週間程度遅らせることを徹底、品質低下を防ぐことに一定の成果があった。今後は、「ヒノヒカリ」と作業時期が重ならず、食味が良く、栽培特性に優れている「まいひかり」を導入することを考えている。
 冨士重夫全中常務は情勢報告のなかで、「米生産ではわずかの生産過剰でも価格下落につながるという価格の特殊性があるため、生産調整を厳格に行うことが重要だ」と、生産者自らが行う計画生産の重要性を訴えた。

(2006.12.19)



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