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エタノール原料イネを刈り取り −JA全農新潟


◆今年度も順調に生育

 JA全農は一昨年から新潟県下でエタノール原料イネの栽培調査やエタノール製造実証事業に取り組み、今年度、農水省の「バイオ燃料地域利用モデル事業」に採択された。
 バイオエタノール原料イネの栽培実証調査は19年度はJAにいがた南蒲管内で31名が参加して26ha、JAえちご上越管内で11名が参加して11haの合計37haで栽培した。
 10月9日にはJAにいがた南蒲管内の菊池武昭(57)さんの圃場で刈り取りが行われた(写真)。菊池さんは18年度も栽培実証調査に参加し今年度も約80アールにエタノール原料イネを作付けた。
 品種はインディカ系米の「北陸193号」で食用イネにくらべて収量が約1.6倍多いとされる超多収性品種。昨年の実績は10aあたり880kgだった。今年は生育が良く「900kgはいくのではないか」と菊池さん。
 コシヒカリより作期が遅い晩生品種で、今年は9月20日のコシヒカリの収穫よりも2週間以上時期がずれた。出穂期もずれるため交雑の心配はなく、イモチ病につよいほか、茎が太く倒れにくいという特徴もある。
 刈り取り後は食用米と同様にカントリー・エレベータに運ばれ保管された。生産費は1kgあたり50円(農機具減価償却などは含まない)でこの事業では1kg20円で買い取る。コストの不足分は産地づくり交付金を活用している 。

10月9日、菊池さんのほ場で行われたエタノール原料イネの収穫 食超多収性品種の「北陸193号」
10月9日、菊池さんのほ場で行われた
エタノール原料イネの収穫
食超多収性品種の「北陸193号」

◆一貫モデルの構築へ

ほ場には「未来のエネルギーへの挑戦」の看板が立つ
ほ場には「未来のエネルギーへの挑戦」の
看板が立つ

 JA全農の事業の特徴は(1)原料イネの栽培、(2)バイオエタノール製造、(3)エタノール3%混合ガソリン(E3)の製造、(4)JA−SSでのE3販売、を一貫して行う事業モデルをつくろうとしている点だ。県内で原料イネからE3の製造・販売まで行うエネルギーの「地産地消」をめざす取り組みであり、JA全農の燃料事業と県下JAのSS事業を活かしたJAグループならではの取り組みでもある。
 エタノール製造プラントは新潟市のコープケミカル(株)新潟工場内に建設をする。また、直接混合によるE3の製造は全農新潟石油基地で行う。販売エリアは同石油基地の供給エリアで約40か所のJA−SSを予定している。
 モデル事業としての実証目標は原料イネの栽培面積280ha、生産量を年2250トンとしている。
 それをもとに製造するエタノールは1000klでE3の販売量は年間3万3000klを見込む。
 農産物からのエタノール製造には変換効率が問題となるが、全農によるとコメ1tに対して0.45klのエタノールが製造されるという。麦では同0.43kl、トウモロコシでは同0.4kl、てん菜では同0.1klだという。でんぷん、糖分が多いコメの変換効率は決して低くはない。
 プラント製造工場の着工は20年1月を予定。21年1月に試運転を開始し、21年度中にはE3の販売を始める予定だ。全農新潟県本部が供給するガソリンは17年度で12万5000kl。計画どおり供給されれば3割近くがE3となる。
 また、同事業では籾殻を利用してエタノール製造のための熱源として利用することや、発酵残渣を配合飼料原料として活用することも進める。
 20年産では280haの作付け面積を目標。JA全農の小池一平営農総合対策部長は「来年は多くの生産者に参加してもらい目標どおりE3供給を実現したい」と話す。この事業は水田を水田として活用することにより地域の農地・水・環境を保全していくことも目的だ。菊池さんは「コメだけでなくエタノールづくりにも参加しているというこの事業に参加して仕事が楽しくなった。休耕田を使わないことはない」と期待を寄せている 。

(2007.10.19)

 

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