農水省総合食料局長の私的検討会として設置された「販売」を軸とした米システムのあり方に関する検討会(座長:八木宏典東京農業大学国際食料情報学部国際バイオビジネス学科教授)の第2回検討会が、10月19日農水省で開催された。
初回は「米をめぐる現状」を議題にした。今回は「世界の食料需給をめぐる現状」をテーマに、柴田明夫丸紅経済研究所所長(検討会委員)、中橋和久豊田通商(株)食糧部長が専門家として報告した。
◆穀物価格の高騰は続く
▽柴田明夫氏の報告のポイント
国際商品市況は10〜15年サイクルで変わって来た。1960年代は低位安定、70年代は強い上昇、80〜90年代は長期低落だった。2002年からは強い上昇を続けており、あと10年以上続くのではないか。人口30億人のBRICsの工業化で、資源、食料需要が旺盛になり、さらにエネルギーと食料市場の競争が引き起こした資源枯渇の緩和策が緊急の課題だ。
1980〜2005年までに先進国の物価(CPI=工業製品価格)は2.5倍に上昇したが、原油、非鉄、穀物などの一次産品価格指数(商品市況)はほとんど上昇しなかった。2000年代に入り新興国の急速な工業化を背景に、一次産品価格が一般物価に追いつく動きが始まった。今後は商品市況が高止まり、さらに一段の上昇に向かうなかで製品価格への価格転嫁が行われ、全般的なインフレ傾向が強まろう。世界経済は5%成長時代に入っているとみる。
世界の食料需給をみるうえでの視点は次の6つだ。
1.均衡点の変化(量と価格)
2.世界食料在庫の減少(1970年と類似)
3.限界点を超えた中国のインパクト
4.特定作物に依存する世界の食料(米、小麦、とうもろこし、大豆、いもなど)
5.遺伝子組み換え作物をどうみるか
6.バイオエタノールの急増で3つの争奪戦が行われている=国家間、エネルギーと食料の市場間、農業と工業の間(水、土)。
国際穀物マーケットは基盤が脆弱だ。国内市場が優先され、生産量に対して貿易に回るのは約8分の1。主な輸出国は米国、カナダ、オーストラリア、南米に限られる。輸入国は日本、韓国などアジアに偏重。最近は新たな輸入国として中国が登場した。
長期的にみた穀物、原油価格はいづれも一段と高い水準が続くだろう。背景にあるのは中国、インドの人口・所得爆発だ。 ◆日本、”買い負け”も
▽中橋和久氏の報告のポイント
世界の穀物生産量は21億トンで、そのうち貿易量は3億トン(15%)。日本の穀物輸入量は約2800万トンで、貿易量の9%に当たる。輸入先はアメリカが大麦を除き、小麦、大豆、とうもろこし、米がいずれも一番で、アメリカに大きく依存している。発展途上国の経済成長による穀物需要増、バイオ燃料としての穀物需要増、地球規模の気候変動の影響による農業生産への影響などの要因は中長期にわたり続くだろう。また、行き場を失ったアメリカのサブプライムマネーが投機資金として穀物相場に流入している。
オーストラリア、カナダの小麦が大減産で、買い付けがアメリカ一国に集中している。各国の買い付けペースは例年の2〜3倍と言われるほどだ。
日本の穀物輸入の現場で起こっているのは、麦の場合、国際相場を模様眺めしている間に他国が買ってしまい、”買い負け”ているケースだ。また、外麦の政府売り渡し価格が今年4月から変動相場制に移行し、国内製粉業者への売渡価格が10月から10%上がったが、輸入価格の実勢はさらに高く、ストレートに反映させた場合はかなりのアップになろう。
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第3回検討会は11月6日に開催の予定で、「米の需給調整について」をテーマにする。 |