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飼料用稲の生産状況など検討
〜「販売」を軸とした米システムのあり方に関する検討会 ―農水省


 農水省に設置されている「販売」を軸とした米システムのあり方に関する検討会(座長:八木宏典東京農業大学国際食料情報学部国際バイオビジネス学科教授)は、このほど開いた検討会で、稲や飼料米の家畜飼料としての生産・利用の状況などについて検討した。
 わが国の飼料自給率は25%(平成18年度概算)と低いため、食料自給率の向上や畜産経営の安定を図るためには、可能な限り飼料生産を進める必要がある。主食用米の生産調整では耕種と畜産の連携で水田を利用した自給飼料の生産が行われており、稲を家畜飼料として活用する取り組みが行われている。子実と葉茎のすべてを活用する稲発酵飼料(WCS)、副産物または飼料専用の稲わらの生産・利用、飼料向けの米の生産など形はさまざま。

◆牛専用は稲ホールクロップサイレージ

 稲WCS(ホールクロップサイレージ)は、子実が完熟する前に稲を刈り取り、穂と葉茎を丸ごとサイレージ(発酵)した牛向けの飼料で、長期保存が可能。畜産農家にとっては、一般的な青刈りトウモロコシサイレージと同程度の栄養価のある良質な粗飼料だ。また、稲作農家にとっては、飼料用稲の基本的な栽培技術は主食用水稲と同じで取り組みやすく、作付けが増加している。専用収穫機が開発され、収穫、ロール形成ができる。主食用品種を作付けすれば、10a当たり1400〜1700kg程度、飼料用品種では2500〜3500kg程度の収量があるという。平成18年度の作付け面積は全国で5182haだった。
 稲作農家にとっての稲WCSのメリットは、排水不良田や未整備田でも作付けが可能で、農地の有効利用ができる。田植えや水管理は通常の稲作栽培体系と同じで、取り組みやすい。また、麦・大豆などの連作障害を避けることができる。
 畜産農家のメリットは、稲WCSは栄養価があり、牛が好んで食べること。長期保存が可能で、年間またはエサが不足しやすい冬期に安定した供給が可能だ。飼料増産のための労力をかけずに頭数を増やし、規模拡大することが可能だ。
 今後の課題は、多収品種の開発、直まきなど省力栽培、肥培管理に低コスト栽培技術の実現を図るほか、生産者と需要者の間での安定的な供給と利用のための計画生産などが必要とされる。
 政策支援として、作付け拡大のためには、10a当たり1万3000円や、米の生産調整のメリット措置としての産地づくり交付金などがある。また、畜産農家の利用拡大のためには10a当たり1万円の支援がある。

◆飼料用米の栄養価、トウモロコシとほぼ同等

 飼料用米にはMA米が回されるほか、加工用に多収品種として開発されたものや、WCS向けに開発された品種で子実が多収のものが使われる。また、19年産米の緊急対策では、18年産主食用米が回される。米の栄養価は、牛、豚、鶏用配合飼料の主な原料であるトウモロコシとほぼ同等なので、代用として使用できる。このため、価格が輸入トウモロコシより安くて、安定供給されることが必要だ。家畜に米を多給すると、牛ではアシドーシス(消化異常)や下痢の原因となることがある。豚では背脂肪が増加したり脂質が変化する。鶏では卵黄の色が濃くなるなどの影響がある。このため、給与量の調整が必要だ。飼料用米の作付けは、平成18年度見込みで全国で104ha。
 稲作農家にとっての飼料用米のメリットは、排水不良田や未整備田でも作付けが可能で、農地の有効利用ができる。田植えから収穫まで通常の稲作栽培体系と同じで取り組みやすい。農機具費の新たな投資がいらない。また、麦、大豆等の連作障害を避けることができるなど、稲WCSとほぼ同じ。畜産農家にとってのメリットは、輸入トウモロコシの代替として配合飼料の原料に利用できる。長期保存が可能で、既存の配合飼料と同様の扱いで給与でき、特別な設備や手間は不要、など。
 今後の課題として輸入トウモロコシとの価格差の縮小、既存の品種を上回る多収品種の開発、省力・低コスト栽培技術の開発、効率的な保管・流通体制の確立、配合飼料工場の条件整備などが必要だ。
 20年産から生産調整実施者へのメリット付与のため実施される「地域水田農業活性化緊急対策」では、非主食用米の低コスト生産技術の確立試験に取り組む生産者の生産調整拡大分に対し、10a当たり5万円が交付される。

(2007.12.25)

 

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