宮崎県清武(きよたけ)町の谷口孵卵場黒坂農場(飼養羽数は約1万2000羽=24週齢の肉用種鶏)で、平成19年1月13日までに鶏が累計で3800羽死んだ原因は、動物衛生研究所(茨城県)で検査した結果、H5亜型のA型インフルエンザであることが判明したと13日、農水省が発表した。
鳥インフルエンザの疑いがわかったのは、1月11日。宮崎県庁から農水省に対し、「1月10日から11日にかけて肉用種鶏750羽が死亡し、農場の管理獣医師の簡易キット検査による陽性反応が見られ、高病原性鳥インフルエンザの発生が疑われる」との連絡があったことが発端だった。
農水省は12日午前8時30分から第1回目の高病原性鳥インフルエンザ対策本部を開催し、宮崎県に農水省の専門家を派遣、都道府県との連絡調整をはかるとともに、「高病原性鳥インフルエンザに関する特定家畜伝染病防疫指針」にもとづき、まん延防止措置をすすめている。また、都道府県に対し、農場への緊急立ち入り調査等により異常がないことを確認するとともに、鳥インフルエンザの早期発見や早期通報の徹底するよう、通知した。
鶏の死亡羽数は12日1650羽、13日1400羽で累計3800羽。鳥インフルエンザの発生がわかったため、農水省と宮崎県はこの農場の消毒や、農場の半径10km以内にある16農場(約19万4000羽)の鶏や卵の移動制限など、鳥インフルエンザが他の養鶏農場に広がらないよう、防疫措置を実施している。16農場の立ち入り検査もおこなう。
また、14日に残りの約8100羽を殺処分した。15日から既に死んだ鶏を含む全体の焼却を始めた。半径10km以内の16農場の飼養形態は、肉用種鶏4農場(6万2000羽)、肉用鶏7農場(7万5000羽)、採卵鶏5農場(5万7000羽)。
動物衛生研究所は、引き続きウイルスの性状の検査をおこない、病原性や遺伝子型等を確認する。
◆まん延防止措置徹底
農水省は15日18時から第2回目の対策本部を開催した。鳥インフルエンザ対策の陣頭指揮をとるため、訪問中のアメリカから予定を繰り上げて15日夕刻帰国した松岡農水大臣が出席した。
松岡大臣は、「鳥インフルエンザを広げないよう、しっかりした情報を提供して、正しい知識の普及につとめること」などを訓辞した。
また、この会議では感染経路を究明するための「感染経路究明チーム」を15日付で発足させた。疫学、ウイルス、野鳥などの専門家6名で構成し、科学的なデータにもとづいた分析・評価などをおこなう。
究明チームの当面のスケジュールは、1月17日に第1回検討会(現地調査)、1月22日第2回検討会(食料・農業・農村政策審議会家きん疾病小委員会と合同で開催)となっている。
委員名は次のとおり。
▽伊藤壽啓(座長=鳥取大学農学部教授)
▽金井裕((財)日本野鳥の会主任研究員)
▽後藤俊郎(宮崎県宮崎家畜保健衛生所主任)
▽西藤岳彦(動物衛生研究所主任研究員)
▽志村亀夫(動物衛生研究所動物疾病対策センター長)
▽米田久美子((財)自然環境研究センター研究主幹)
また、松岡大臣は16日、宮崎県入りし、関係者への見舞い、激励をおこなった。
◆農水省、小売店の表示を調査
九州農政局は、鳥インフルエンザの発生が疑われるとわかった12日から、風評被害などの防止のため、九州各県の小売店で不適切な表示がされていないか、調査を始めた。14日までの調査結果では、不適正な表示34件のうち、店の本部と相談中の1件を除いて表示の撤去、修正等をしたという。不適正な表示は「清武町産でない」、「清武町より40〜50km離れています」などがあった。
農水省は1月15日から当分の間、全国の小売店(デパート、総合スーパー、食料品スーパー、コンビニ、食料品専門店など)を対象に鶏肉、鶏卵の表示について今回の発生に関する不適切な表示がないか調査し、不適切な場合は改善を求めていくという。
感染した鳥の肉や卵を食べることによって鳥インフルエンザウイルスが人に感染することは、世界的にも報告されていない。また、国産の鶏肉は食鳥処理場で通常約60℃のもとで脱羽され、最終的に次亜塩素酸ナトリウムを含む冷水で洗浄されている。国産の鶏卵は、卵選別包装施設(GPセンター)で通常、厚労省の定める「衛生管理要領」にもとづいて次亜塩素酸ナトリウムなどの殺菌剤で洗浄されている。
高病原性鳥インフルエンザは、国内では平成16年1月、79年ぶりに山口県で発生し、同年3月にかけて大分県、京都府、兵庫県などで発生し、約27万5000羽が死亡、とう汰された。さらに17年6月から12月までに茨城県、埼玉県で発生し、約580万羽が殺処分、とう汰されている。
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