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地産地消の一方で市場出荷には問題はないのか
−女性大会〜パネルディスカッション


壇上で論議するパネリストたち
壇上で論議するパネリストたち

 女性大会の1日目、−『食と農の再生』を機軸としたJA女性組織活動のこれから−をテーマにした、パネルディスカッションが行われた。司会役の合瀬宏毅氏(NHK解説委員)は、食と農を結びつける活動で何が問題になっているか、生産者と消費者を結びつけるために必要なことは、(それらのために求められている)女性の役割とは、の3点に焦点を絞って議論を深めていきたいと語り、主に女性組織が中心になって取り組まれている地産地消を掲げた直売所などの活動と、一方で大量に市場出荷されることの問題(矛盾)をJAの中で整理する必要があるのではないかと問題提起した。
 金丸弘美氏(食環境ジャーナリスト)は、「出荷した農産物については、流通が決定権を持っており生産者にはない。(直売所などの)少量多品種のものと、大量に流通するものと同じ土俵で比較し議論することは適当でない」と、JAの経済事業の中で直売部分と市場出荷の役割の違いを説明し、そのようなことをJAの側が消費者にもっとアピールすべきだと語った。
 山下孝治氏(JA島根青年連盟委員長)は生産者の立場から、「農業も経営であるので数字を大切にし、生産者は消費者よりも流通・小売りの状況に気を配ってきた傾向がある。"旬"でないものは高く売れることから、産地自らが地産地消、適作適地を崩してきた面も否定できない」と、これからは経営と安全・安心などの問題のバランスを考慮しながら、地産地消、適作適地の部分も大切にしていきたいと語った。

◆30年も前から子どもたちに農業を教えていない

 佐藤幸也氏(岩手大学教育学部助教授)は、流通の部分も含めた農業の本当の姿がなかなか見えてこないのは、「30年前から教科書から"農業"という言葉が消えたことだ」と指摘。「学習指導要領に農業は書かれていない。この国は子どもたちに農業を教えていない」と教育現場での状況を語り、農業を知らないことからくる無関心が食の安全・安心などに関する不安を増大させている面も大きいのではないか、と語った。
 また、阿南久氏(日本生活協同組合連合会理事)は生産者と消費者を結びつけるために必要なことについて、「まだまだ情報量が少ないと思う。農産物とその食べ方などをセットにして、消費者に伝えることが大切。食に対する関心は高いが、どこにどのような情報があるのかが分からない。各地のJAが地域で食や農について、もっとアピールすべきだ」と、JAグループ全体が意欲を持って食や農に関して世論をリードするというような気概をもってほしいと励ました。
 森山勝子氏(JAかみつが女性会会長)は、女性会の活動として「地域の子どもたちの農業体験教室で、種まきから収穫、料理まで行い、食育活動の支援を行っている。また、郷土料理、伝統食を伝える活動なども行っている。生産者の約6割は女性です。地域の活性化はいきいきした女性の活動から」と、女性の活動が農業や地域を再生させるのではと期待を込めて語った。
 牛谷勝則氏(農水省女性・高齢者対策推進室長)は、食と農、生産者と消費者を結びつける活動で、「地元の食材を使って行う食品加工などで、女性の起業が各地で盛んになっている。女性の活躍の場が広がってきたことを嬉しく思う」と、女性組織を支援する立場から、今後もそのような動きを支えていきたいと語った。
 「販売を視野に入れた生産が求められている時、地域で料理教室などを開き食と農を結びつける活動を行っている女性の役割は、今後ますます増大する。大量生産、大量流通から、地産地消へと状況は変わりつつり、生活者の視点を持つ女性の目の確かさが試されるだう」と、合瀬氏は、直売所などを通して直接生産者と消費者が結びつく活動が、今後JAの中で大きな位置を占めるのではないかと、ディスカッションをまとめた。

(2007.1.23)

 

 

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