農業協同組合新聞 JACOM
   
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コスト削減、個配1兆円などを提案
「2010年ビジョン」の目標の確実な実行めざす「10次中期計画」
日本生協連「全国政策討論集会」 (1/17〜18)


日本生協連

◆事業連帯ごとに戦略を明確化

 日本生協連は1月17日〜18日、東京・品川のホテルパシフィック東京で「2007年全国政策討論集会」を開催し、07年度からの「第10次全国生協中期計画」(10中計)を提案した。
 「10中計」は、第9次中期計画で掲げた「事業目標の多くは達成できておらず、社会的評価や期待と比して事業や組織の主体的力量の遅れは否め」ないとしたうえで、「事業と活動の到達点に確信を持ち、2010年ビジョンで掲げた目標の確実な実行をめざし行動する中期計画」と位置づけている。
 「10中計」は、事業「ふだんのくらしにもっとも役立つ事業」経営「コスト構造改革を徹底する経営」連帯「くらしへの最大貢献をめざす事業連帯構造の確立」組織「社会に開かれた組織〜地域社会との共生〜」社会的役割「消費者組織としての社会的役割の発揮」の5つの柱から成っている。その主な内容をみていきたい。
 「事業」では、購買事業・共済事業・福祉事業そしてITの推進の5分野について目標を掲げている。
 購買事業の店舗業態について「全体として赤字が長期に続く異常な事態」となっており「この事態を脱却する道筋をつける」ために「2010年までのSM出店の計画をエリアごとに策定し具体化をはかりつつ、損益の確立をめざす」。
 具体的にまず、「店舗事業で4%以上の赤字が継続的に続き」「黒字化の具体的対応が描けない地域」は、「事業そのものの撤退を含めた抜本的な決断と対策が必要」だとしている。
 そして店舗事業は「生協・事業連合ごと」に自らの力量評価と人口動向や競合状況の変化など環境分析をしたうえで事業戦略を明確にして取組み「量販店との競争の中で生き残れる」事業を構築するとしている。伊藤敏雄日本生協連専務は提案説明の中で「リージョナル単位でどういう戦略をもつかが重要」だと、事業連合の役割を強調した。
 無店舗業態では、個配事業の2桁成長を維持し「個配事業1兆円と無店舗事業全体で利用世帯組織率20%を確立」。配送や物流システム改革、販売管理費の削減など「事業ボリュームをいかしたコスト削減」などによって「経常剰余率の向上と安定確保」をめざす。また、30年を経た無店舗事業の「総合的な改革に向けた研究に着手」する。

◆すぐに食べられる食材開発に力を

 商品分野については、生鮮・惣菜の営業力を強化することを第1にあげ、「スキルアップやシステム整備をすすめ、鮮度、価格、品揃え」を強化し、中食・外食需要を取り込めるように、店舗・無店舗で「すぐに食べられる食材の開発や惣菜の商品力強化に」取り組む。そして、事業連合が主体となり「各生協で培ってきた力量と英知を結集し、商品力強化を図り、人材育成」に取り組む。
 また、日本生協連は「青果物品質保証システムなど確かな商品づくりのしくみの普及につとめ、競争力ある国内農産物の確立」に努めるが、「世界規模での食材調達の競争が激化することをみすえ、優良な海外産地の開発、調達強化」に取り組んでいく。
 共済事業では「生命・医療保障の分野で組合員に一番に選ばれる共済」をめざして、会員生協と日本生協連との「共同事業の前進、一層の商品力強化」、10年後1000万人規模の加入者を展望した「各種事務・情報システム」などの業務を見直し、質的な転換をはかり基盤整備をすすめていく。
 福祉事業は、多くの生協で赤字構造から脱却できていないので「事業として確立するために、赤字構造からの脱却とモデル事業づくり」に取り組んでいく。
 IT推進としては「生協のインターネット関連事業利用者の大幅拡大をめざし、新しい事業業態を支えるITへの戦略投資を果たす」。日本生協連はWEBを活用した事業を今後の柱の1つとして位置づけ積極的に取り組みを構築していく。

◆事業連帯で効率的な事業構造を構築

 第2の柱である「経営」での最大の課題は「コスト構造改革」だ。なかでも販売管理費率は「さまざまな対策をとりつつも、全国的には増加傾向が続いて」おり、大きな経営圧迫要因となっている。そのため業務内容の整理、効率的な労働と適正な職員配置、地域雇用に応じた賃金体系のあり方などを検証し「人件費改革」に取り組む。
 さらに「全国的に最適化された合理的な物流や情報インフラの整備や見直し」をすすめ、「合理化された販売管理体制をコープグループ全体でつくり」あげる。そのためには「統合化された連帯は必須の要件」としている。さらに「リージョナル単位に業務の一層の統合化を図り効率的な業務構造を構築」すると、事業連合の役割を強調している。
 「連帯」では「各生協が主体的に組織改革を成し遂げ、それを基盤にリージョナル事業連合が指導制を発揮し、連帯の機能統合を強化」する。そのパワーを結集して全国機能の強化を果たすために日本生協連は「各事業連合とともに多様性と重層性をあわせもった提携関係を構築」する。

◆生協ほど日本農業を守ろうとしている団体はない

小倉修吾日本生協連会長
小倉修吾日本生協連会長

 記者会見で小倉修吾会長は、コスト引下げが「10中計の最重要課題」だと語った。そして「個配にITを加えることを目玉にしていく」。メーカーなどと「手が組める」ような事業連合にしていくことなどを重点としてあげた。また生協法改正について「100%ではないが、組織内で納得できる」ものと評価した。
 また、日本生協連は05年の「日本農業への提言」で関税引き下げを提言しているが、日豪EPAによって国内農業が大きな打撃を受けるといわれているがどう考えるのかという質問に、小倉会長は「単協・事業連帯レベルでみれば、生協ほど日本農業を守ろうとしている団体はほかにないと思う。このことにもっと農業側が応えなければいけないと私は思っている。安全でおいしいものをいかに真剣につくるか、ぜひ一緒にやっていきたい」と語った。
 この「10中計」は6月に開催が予定されている通常総会で最終的に決定される。

(2007.1.29)

 

 

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