農水省など関係省庁の局長級で構成する「バイオマス・ニッポン総合推進会議」は2月27日、国産バイオ燃料の大幅な生産拡大に向けた課題と増産シナリオをまとめた。報告書では2030年頃にエタノールを600万kl製造する目標を掲げている。これは現在の年間ガソリン消費量6000万klの1割にあたり、原油換算では360万klとなる。
国産バイオ燃料を大幅に生産拡大する課題としては、新たなエタノール変換技術の開発をあげた。低コストでバイオエタノールを大量生産するためには、さとうきび、てん菜などの糖質原料や米、トウモロコシなどのでん粉原料だけでなく、とくに稲わらや、林地の放置材などセルロース系原料からの製造が必要であるとし、セルロースやヘミセルロースを効率的に糖化・発酵する技術開発を課題にあげている。たとえば現在、新潟県では主食用米の2倍の収量を持つ品種によるバイオエタノール製造試験が地元JAとJA全農によって行われているが、農水省では、今後の研究でコメ粒だけでなく稲わらも含めた稲体全体からエタノール製造ができるようになれば単位面積あたりのエタノール生産量が飛躍的に増え低コスト化にもつながるとしている。
2030年目標600万klのうち、これら稲わら、麦わら、籾殻など草本系原料で180万〜200万klの製造を見込んでいる。稲わら、麦わらなどは、粗飼料やたい肥原料などへの必要量を除いた500万トン程度を利用する計算。
また、現在、ほとんど利用のない林地残材など木質系原料からの製造は200万〜220万klを見込んでいる。
こうした目標の達成のためには、エタノールへの高効率変換技術に加えて、バイオマスの「収集・運搬」の低コスト化も課題となる。具体的には木材生産と合わせて、林地残材の収集・運搬システムや高性能林業機械の開発の必要性をあげた。
また、低コストのバイオマス原料となる資源作物の開発も課題としており、糖質やでん粉質が多い作物を遺伝子組み換え技術などを活用して開発することも課題とした。
バイオマス量を増やした資源作物によるエタノール製造量は200万〜220万klが目標。農水省はこの取り組みを食料自給率向上との整合性を図りつつ、現在、38万ヘクタールあるとされる耕作放棄地を一部を活用することで推進する方針だ。
◆ガソリン税減免も課題
生産拡大目標を達成するには、コスト低下が大きな課題となる。現時点では、世界でもっともエタノール生産量が多く輸出力もあるブラジルからの輸入価格と競合できる価格での生産が必要で、1リットル100円が生産コスト目標となる。
これに見合う価格の原料は現状では、さとうきび糖みつなどの糖質原料と規格外小麦のでん粉質原料に限られる。そのため2010年ごろまではこれらの原料を用いた生産を行い、今後5年間で稲わらなどの草本系原料と製材工場などの残材で100円/lコスト生産を実現、さらに10年後には林地残材や資源作物などでも同コスト生産をめざす。
同時に普及拡大のためには制度面でも課題も多い。わが国ではガソリンにエタノールを3%混合することは既存自動車でも可能だが、ブラジルでは20〜25%混合、米国では一部の州で10%混合を義務づけるなど制度がある。日本でも新車では10%混合対応車も販売されており、2020年頃に安全性などを確認したうえでエタノールの混合上限規定を見直すことにしている。また、普及のためガソリン税の減免措置を農水省など関係省庁は引き続き求めていくことにしている。
そのほか報告書では、国産バイオ燃料の利用は農業、食料、環境、エネルギーなど幅広い分野に関わる問題であることを国民に理解してもらいとくに子どもへの教育も重要だとしたほか、ライフサイクル全体としてのエネルギー効率や温暖化防止効果などの評価も必要だとしている。
松岡農相はこの報告について同日、安倍首相に報告した。
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