通い容器の本格普及や電子タグの活用による物流効率化などにより食品流通のコスト削減を図るための新たな基本方針を農水省が作成した。
食品流通構造改善促進法に基づくもので、基本方針は同法が施行された平成3年に作成されほぼ5年ごとに見直されてきた。国の方針に即して食品製造業者などが「食品流通構造改善計画」を策定し農水大臣の認定を受ければ長期低利資金の貸し付けや、税制上の優遇措置が受けられる。
今回の基本方針は今後5年間で国が行う施策の方向を示したもの。食料供給コストを5年で2割削減する政府方針に向け、新たに工程表も作った。
流通のコスト縮減策では▽通い容器の普及、電子タグなどIT活用による物流作業の効率化▽物流拠点の再編、配送の共同化などによる物流ネットワークの実現などのほか、青果ネットカタログ「SEICA」の普及による食と農の連携強化や地産地消の推進による多様な流通チャネルの形成も推進する。
通い容器の普及率は17年度でわずか3.1%。生産者と消費者の顔の見える関係による取引きを中心に普及しているが、今後は食品流通の7割を占める卸売市場での普及もめざす。3月には関係者による協議会を設置。4月から実務担当者による推進策の検討を進める。
生産から小売までの品質管理体制に強化も進める。
産地で予冷し保冷輸送をしても、卸売市場での温度管理ができなければ小売段階でのコールドチェーンが途切れしまう。今後は、低温卸売市場の整備と多温度帯輸送車の導入を進めるほか、小売段階でも冷蔵庫などの導入支援といった品質管理の高度化をはかる。
コスト縮減策のほか安全対策、環境対策も盛り込んでいる。
食品安全への関心の高まりに応えてトレーサビリティシステムづくりや表示の充実を推進してきたが、規格や表示に関わる負担が増しているという声もある一方、流通ルートの多様化によって消費者に正しい食品情報が提供されていないという指摘もある。このため今後は、消費者の関心と流通コストなどの実態をふまえた規格・表示のあり方も検討する。
食品廃棄物の発生抑制とともに、肥料・飼料原料としての再生利用をはかるリサイクル・ループの構築など、食品リサイクルの目標設定を業種別に検討していいく。また、一人年間300枚とされるレジ袋の削減のために、レジ袋の有償化や繰り返し使用が可能な買い物袋の提供などの推進も課題にあげている。
食品産業の規模は80兆円(平成12年)。15年間で20兆円増加した。このうち家庭で購入して調理するなど生鮮品の消費額は15兆1000億円で15年前より2.5%減った。
一方、加工品は43%、外食は53%と大幅に伸びた。外食率は35〜36%程度と、ここ数年は頭打ちだが、総菜や弁当など中食率が伸びているため、食の外部率全体では10年ほど前に40%代となって以降も伸びている。
このため基本方針では卸売市場を核とした加工・物流機能の強化も課題としている。
|