農業協同組合新聞 JACOM
   
農政.農協ニュース

「上限関税なし」、「重要品目数」など最優先事項を確認
−G10閣僚会合 (5/16)


 5月16日、パリでG10閣僚会合が開催された。日本のほか、スイス、ノルウェー、韓国、台湾、アイスランド、イスラエル、モーリシャスの8か国の閣僚、大使が出席した。日本からは松岡農相が出席した。
 会合ではファルコナー議長の新文書をめぐって意見交換、WTO交渉が重大な局面を迎えるなか、G10の結束をさらに強化しつつ、上限関税導入の阻止をはじめG10として優先順位を明確にして戦略的に交渉に臨むことを確認した。
 会合後に「G10閣僚共同声明」を発表。議長新文書は、一部の少数国での交渉ではなく、加盟国全体での交渉を促進させることに貢献するものと評価をしているが、その内容ではとくに市場アクセス分野を問題視。議長が議論の「着地点」として示しているもののなかには「G10として受け入れられないものもある」と強調している。
 そのうえで農業モダリティ案に盛り込まれるべき事項として、上限関税は導入しないこと、また、重要品目数は議長案の「1〜5%」は受け入れられず、適切な扱いと十分な数の確保が重要であることを強調した。また、国によって高関税品目の数や、重要品目の関税階層など関税構造に違いあることへの配慮と、高関税品目の関税削減率に柔軟性が必要であることも中心的な事項だとした。

◆戦略を整理

 高関税品目の関税削減率について、議長新文書ではEU提案の60%を最低とする提起になっているが、G10は「受け入れ可能な水準を超えている」とし、国内支持と厳格な輸出競争などの他の分野への規律とのバランスが確保されなければ、関税削減分野では譲歩できないことを強調した。閣僚会合ではこうした点を今後の交渉の最優先事項として確認した。交渉が重要な局面を迎えているとの認識のもと「条件闘争」(農水省国際部)を睨んで、日本にとっても重大な「上限関税の導入阻止」などを改めて明確な交渉目標としたもの。
 一方、同日にはG10閣僚会合に先だって、G6会合と豪州主催の非公式閣僚会合(少数国会合)が開かれた。
 G6(日本、EU、米国、ブラジル、インド、豪州)会合では今後の交渉の主要事項とプロセスについての意見交換とともに、松岡農相が日本の交渉ポジションを説明した。G6会合については、5月23日ごろに東京で開催される方向で調整が進められていたが、調整がつかず今回パリで当初予定を前倒しして開催されたもの。松岡農相は「有意義な会合だった」と話した。
 また、豪州主催の少数国会合には日本をはじめ18か国が参加。ラミー事務局長が年内合意のためには、少数国会合とマルチの交渉が並行して進められることが必要と発言した。他の国も交渉作業の加速化については共通の認識が示されたが、G4やG6という主要国以外の国の関心事項が取り残されないようにすることが重要との意見もあったという。
 また、議長新文書については、マルチの交渉を促進させるものとの評価がある一方、バランスが十分ではないとの批判もあった。松岡農相も上限関税の導入なしと、重要品目についての適切な扱いと十分な数の確保が条件だと強調し、交渉を促進させるという議長新文書の意図は理解するが、内容はバランスを欠いており、今後バランス確保を求めていくことを表明した。

◎G10閣僚共同声明の概要(5月16日)

・07年末までにドーハラウンドを成功裏に妥結させるためにG10は農業モダリティ確立に向けてしっかり貢献することを再度宣言。
・議長新文書はマルチ(全体)のプロセス(交渉)を再活性化させる貢献ではあるが、市場アクセスの「着地点」のなかにはG10として受け入れられないものもある。すべての加盟国にとって受け入れ可能なバランスのとれた結果となるよう建設的に作業。
・G10がモダリティ案で十分に強調されるべき中心的関心事。▽上限関税は導入しない▽国によって高関税品目数など関税構造が異なることに配慮する▽上位階層における関税削減率の柔軟性。議長新文書はG10の受け入れ可能な水準を超えている。▽重要品目における適切な取り扱いと十分な数。重要品目数について「1〜5%が議論の中心」という議長の考えは受け入れられない。
・受け入れ可能な結果のためには公平な負担であることが重要。
・交渉への参加と透明性確保は重要。交渉のプロセスと議論の両方が各国のものとなることが成功の必須条件。

(2007.5.21)

 

 

社団法人 農協協会
 
〒103-0013 東京都中央区日本橋人形町3-1-15 藤野ビル Tel. 03-3639-1121 Fax. 03-3639-1120 info@jacom.or.jp
Copyright ( C ) 2000-2004 Nokyokyokai All Rights Reserved. 当サイト上のすべてのコンテンツの無断転載を禁じます。