農業協同組合新聞 JACOM
   
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米国の穀倉地帯が自動車燃料のタンクに
食料とエネルギーで穀物の争奪戦が
レスター・ブラウン氏が農業環境シンポジウムで講演


レスター・ブラウン氏
レスター・ブラウン氏

◆米国のトウモロコシの30%がエタノール原料に

 世界の食料・環境問題の専門家であるレスター・ブラウン氏(米国アース・ポリシー研究所長)が、5月23日に東京・イイノホールで開催された農業環境シンポジウム「食料vsエネルギー 穀物の争奪戦が始まった」(農業環境技術研究所主催)で、「バイオ燃料が食卓を脅かす」と題して基調講演を行った。
 このなかで氏は、現在の米国のエタノール工場の生産量は年間61億ガロン(約2309万kl)だが、建築中の工場が稼動すると64億ガロン(約2422万kl)増加し、来年末には現在の倍以上の生産量になるので、原料となるトウモロコシの使用量も倍以上となり、米国におけるトウモロコシ生産量の30%近くが燃料用になり、米国の「穀倉地帯は自動車燃料のタンク」に変えられようとしていると指摘した。
 さらに、いままでは、食料経済とエネルギー経済はは別だったが、これが一体化、エネルギー価格に食料価格が連動し、石油価格が上がれば穀物価格も上昇する。食料と自動車燃料の奪い合いになればトウモロコシなど穀物の価格はさらに上昇する。
 米国の生産者は、貿易政策や市場動向に左右される食料としてよりは、自分たちでコントロールしやすいエタノール原料として生産することを好んでいるという。

◆世界の食料を不安定にする米国の政策

 この食料とエネルギーの競合は、平均年間所得3万ドル(IMF調査)の自動車所有者8億人と年間所得3000ドル以下の貧困層20億人の競合になっている。価格の上昇は、メキシコやアフリカのトウモロコシを主食とする国の人びとの生活に大きな影響を与え、政治的な不安定化が生まれることを危惧。トウモロコシを主食としない国であってもトウモロコシは、肉類や牛乳・ヨーグルトなど多くの食料のベースになっており、トウモロコシ価格の上昇は食料価格の上昇を招くことになる。
 トウモロコシを原料とする米国のエタノール政策は「米国における石油の不安定さを解消するために、世界の食料の不安定を招いている」と指摘した。
 そして自動車用エネルギーとしては、ハイブリットなどの技術があり、風力発電による電気を就寝時に蓄電する方法もあるとし、新しいエタノール工場の認可を一時停止して、現在起こっていることや影響を分析しその結果を判断するべきだとよびかけた。

◆いま岐路にたっている

 そして最後に「いま起こっている問題は、食料供給を人にするのか、車にするのかということであり、この問題の決定的な問題点は、他の分野でみられるような仲介者・調停者が存在していないということだ。現在の状況を動かしているのは唯一、マーケットの力だ」「政治的にも、経済的にもそして環境の問題また道徳的な観点からも、将来的にわれわれの文明をどのような方向にもっていくのかという非常に重要な岐路に立っている」と結んだ。

(2007.5.28)

 

 

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