独立行政法人農業者年金基金(中川坦理事長)はこのほど、平成18年度の運用状況などを発表した。
18年度末の加入者累計は8万3972人。18年度の加入状況にはこれまでと違った特徴が表れている。新規加入者は2296人で、15年度以降は毎年1600
人程度の増加だったが、18年度は大幅に増え、19年度に入ってからも加入増の勢いは続いているという。
また、加入者累計のうち、女性の比率は8%だが、18年度の新規加入者中、女性は30%と大きく伸びている。加入者の経営品目もこれまでは耕種が主体だったが、18年度の新規加入者は、稲作が25.7%、野菜が22.2%、畜産・酪農が15%など、耕種以外でも増えている。地域的には北海道、長野、南九州が多い。
65歳の農業者の平均余命は男性が22年(87歳)、女性が27年(92歳)と平均的な日本人の余命よりは長い。老後の生活費がどのくらい必要か、平成15年の農林水産省統計では、65歳以上の高齢農家世帯では現金支出で月額23万円(年額276万円)が必要とされる。
このうち、国民年金の支給額は40年加入で月額6万6000円、夫婦合わせて13万2000円(年額では158万円)だ。農業経営を後継者に譲って農業所得がなくなった場合は国民年金だけでは十分とはいえず、老後の生活費は自分で準備する必要がある。
農業者年金に加入すれば、たとえば夫婦ともに30歳で加入し、月額保険料をひとり2万円とし、保険料の国庫補助を受ける場合、30年間保険料を納付すると、夫婦合わせて年額134万円の年金を受け取れるという。認定農業者やその配偶者、後継者など一定の要件を満たす人には、保険料の国庫補助があり、農地等の経営承継をすれば、原則として65歳から特例付加金として受け取れる。
国民年金と農業者年金を合わせると、基本的な老後の備えはできることになる。
◆JAも加入促進を
農業者年金は昭和46年にスタートした。農地の所有権利を次世代に移転するねらいが強く、加入者は耕種部門が多かった。30年たった平成13年に制度の大改正をおこない、14年から今の制度に。年間60日以上の農業従事者は誰でも加入できるようになった。しかし、平成14年には年金額を9.8%カットしたため、年金のイメージを下げたこともあった。
加入促進をすすめているのは基金、全国農業会議所、全国農協中央会、農業者年金連絡協議会の4団体。平成14年以降、新規加入者が年間1600人程度にとどまっていたことから、18年11月にはこの4団体で、平成21年度の10万人加入達成をめざすことを申し合わせた。19年3月には、さらに年度別、市町村別・農業協同組合別の数値目標を決め、加入推進活動に全力をあげることを決めた。各年度に新規加入者を約5700人づつ増やす計画だ。
具体的な加入促進活動として、合併前の旧市町村や集落単位に農業委員やJA役職員などによる加入促進班を設置し、この班の指導者として推進リーダーを全国で2600名配置する。
これまでも、熱心な推進者がいる地域では加入者が多いという。今後は、JAの活動のなかで、さらに加入者促進をうったえていくことが期待されよう。
年金基金では、「ひとりひとりが農業者年金を手当して、老後の安心を得て欲しい」と話している。
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