政府は6月19日、経済財政諮問会議の答申を受けて、「骨太方針」といわれる「経済財政改革の基本方針2007」を閣議決定した。サブタイトルは「『美しい国』へのシナリオ」。
農業分野に関わる項目は、グローバル化改革としてWTO、EPAの取り組み強化のなかに盛り込まれたほか、地域活性化策として農地改革も位置づけられている。
焦点となっていたEPA交渉については21年はじめには現在の3倍増の12か国以上と締結することが期待されるとし、米国、EUとのEPAについても「諸外国の動向、これまでのわが国との経済関係、各々の経済規模等を念頭におきつつ、将来の課題として検討していく」と記述した。
また、国境措置に関しては、対象品目の絞り込みや関税率の引き下げで「交渉のイニシアティブを発揮」するとした一方で、農業の体質強化の進ちょくに留意し、「妥結内容によって影響が発生する場合があれば、構造改革に資するものに限定して措置を講ずる」ことも明記した。
農地改革について言及した地域活性化策では、「地域の活力なくして国の活力なし」と強調し、競争力のある強い農林水産業への第一歩を踏み出す、としている。農地改革はそのために必要な改革と位置づけられ、農地リースの加速化による農地集積、農業生産法人の要件見直しなどの検討を進め、農地の「所有」から「利用」を促す改革を具体化していくとしている。
改革案は農水省がこの秋までに取りまとめる改革方向と工程表をもとに具体化するとしているが、農地も含めた農業改革全体について経済財政諮問会議でも議論を行うことを明記している。5年程度での耕作放棄地ゼロも目標にした。
19日の会見で太田弘子経済財政担当大臣は「骨太07」の特徴として「美しい国の経済のイメージとして、自由、規律、持続可能性を示した」ことを挙げた。同方針では持続ある経済について「子どもや孫の世代への責任を果たし得る経済」と定義している。
一方、骨太07のもうひつつの特徴として「非常に重要でありながらこれまで本格的に着手されてこなかったテーマ」として生産性向上、大学改革とならび「EPA、農業」も課題にしたことも挙げた。太田大臣は今後の議論の仕方をしっかり詰めていくと話し、「夏から、たとえば集中審議するなど確実にやり遂げていきたい」と話す。
骨太方針の「方針」ともいえる「持続ある経済」の視点がどう農業分野の改革論議に反映されるか、注視したい。
経済財政改革の基本方針2007(農業関連部分の要旨)
【WTO、EPAの取り組み強化】
◎ドーハラウンドの19年中妥結に向けた積極的な取り組み。
◎EPA工程表にしたがって交渉を推進。米国・EUを含め将来の課題として検討。
◎交渉のなかで国境措置の対象品目の絞り込みや関税率の引き下げでイニシアティブ発揮。国内農林水産業の体質強化進捗に留意。妥結内容によって影響が発生する場合、構造改革に資するものに限定して措置。
【農地改革】
◎農地の「所有」から「利用」を促すため農水省が19年秋までにまとめる改革案と工程表に(経済財政諮問会議の議論を)含める。
◎5年程度で耕作放棄地ゼロをめざす。
◎農地リースの加速化−定期借地権的制度、一般企業への賃借促進等、農地の集積促進。
◎法人経営促進−農業生産法人の要件見直し。
【多様なライフスタイルを支える環境整備】
◎国民運動として食育を推進。
◎有害鳥獣対策の推進。 |
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