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「現時点で同意できるものではない」
−赤城農相 ファルコナー議長文書 (7/24)


 赤城農相は7月24日の会見で17日に提示されたファルコナー議長のモダリティ(各国共通の貿易ルール)テキストについて「一定の改善が見られるものの、なお厳しい内容がある。現時点で同意できるものではない」として今後の交渉で「さらなる修正を求める」考えを示した。
 ファルコナー議長テキストのうち「市場アクセス」分野では、上限関税の考え方は削除された。日本はこの点について、日本・G10の主張が反映されたと評価している。
 しかし、「重要品目」であっても削減後の関税率が100%を超える品目が有税品目の5%以上ある国は、関税割当(TRQ)を原則的な拡大幅よりさらに大きくしなければならない、という新たな考えが示された。
 農水省はこの考え方について「特定の関税構造を有する国により多くの支払いを求める考え方」だとして支持できないと強調している。

◆ 有税品目ベースに問題

 一般品目にくらべて関税削減幅が緩和される「重要品目」の数は、今回の議長テキストでは「有税品目の4〜6%」とした。また、最上位階層の関税品目が30%以上あるなどの場合は、「6〜8%」まで増やすことができるとしている。
 5月の議長文書では重要品目数が1〜5%とされたことにくらべると今回はわが国にとって改善がみられる。
 ただし、重要品目を指定する分母を有税品目としていることが問題となる。
 日本の場合、関税品目(タリフライン)は1326だが、関税がゼロの品目を除いた有税品目となると1024となる。かりに8%を確保した場合、タリフラインがベースなら106品目程度となるが、有税品目ベースでは80品目と一層厳しくなってしまう。有税品目を分母にすべきという考え方はブラジル、インドなどのG20が主張していたがその考え方を反映させたとみられる。
 この考え方に従うと関税ゼロの品目が多い国ほど不利なる。しかし、その国の努力の結果として貿易促進のために関税をゼロにまで下げたといえ、「(輸出国にとって)関税ゼロはいけないことか、という話になる」(農水省国際部)としてタリフラインベースでの基準に修正を求めていく。
 また、条件付きで最大8%まで重要品目に指定できるといっても、その場合は、「全体平均で4.5〜6.5%以上のTRQ拡大幅を確保しなけければならない」という代償措置も盛り込んでおり、この点についても今後修正を求め重要品目の数では「無条件で8%」を求めていくという。

◆ 国内支持、米国厳しく

 「重要品目」を選択した場合のTRQ拡大の原則的なルールは、一般品目に適用される関税削減率の3分の1を採用した場合には国内消費量の「4〜6%以上の拡大」を提示。一般品目の関税削減率の3分の2を採用した場合は「3〜5%以上の拡大」とした。
 農水省は一般品目との関税削減率との差に応じて輸入枠を調整するという考え方自体には一定の評価をするものの、一般品目の削減率との差を少なくした場合のTRQ拡大幅の縮減程度(2/3を適用)が不十分だとしている。
 また、低関税輸入枠の輸入量が国内消費量の10%以上あれば(一般品目の関税削減率の3分の2を採用した場合)、TRQ拡大幅は「2.5〜3.5%」に軽減し、国内消費量の20%以上輸入量なら「2〜3%」に軽減するという輸入量によってTRQ拡大幅を調整する考え方を示した。
 また、枠外輸入量が低関税枠の輸入量の50%を超えるような輸入水準が高い場合の縮減ルールも示しているが、農水省は縮減の程度が不十分だとしてこの点も修正を求めていく。
 一方、「国内支持」のうち貿易歪曲的国内支持については、米国の水準は164億ドルから130億ドルと示された。数字に幅はあるが、米国が6月のG4会合で示したという170億ドルは含まれておらず米国にとっては厳しい内容になった。
 ただし、関税削減では、最上位階層(75%以上)の削減率を66〜73%としており、この分野はEUにとっても厳しい内容となっている。
 また、輸出国家貿易については2013年までの廃止を提示しており、これは豪州とカナダにとって厳しい。
 途上国が求めている特別品目(SP)や特別セーフガード(SSG)については、「さらに交渉が必要」との記述で前回の議長文書からの進展はない。4月末の議長文書では、SPについては重要品目の数が1〜5%という前提で5〜8%と提示したり、品目の指定については途上国の自主的判断を認めない内容となっているなどの点について猛反発が出ていたが、今回の議長テキストをまとめるまでの間に議論の進展がなかったことが示されたかっこうだ。
 ジュネーブではこの議長テキストをもとに7月23日から予備的な議論を行い、9月から交渉が本格化する予定になっている。赤城農相は24日の会見で輸出国、輸入国にとってバランスのとれた内容となるようモダリティ案の修正を求めていくことと、途上国と先進国との「橋渡し役」を果たしていく考えを強調した。

◎当面のスケジュール
 7月23日から 農業・非農産品の予備的議論
 7月下旬 貿易交渉委員会・WTO一般理事会
 8月 交渉会合を実施せず各国で議長テキストを検討
 9月3日以降 集中的な交渉プロセスの実施
 9月以降 改訂版テキストの提示

日本の主要な品目の関税水準とタリフライン数

(2007.7.25)

 

 

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