米国のエタノール需要の急増によってトウモロコシなど飼料価格が高騰し畜産経営が厳しさを増しているなか、経営安定を図る長期平均払制度と損失補償契約などの仕組みがJAから改めて注目されている。
肉用牛や養豚などの畜産生産は販売までに長期間かかることから、畜産物価格や生産資材価格の変動が所得に大きく影響を与える。そこで計画的・安定的な畜産経営を支援するために考えられたのが「長期平均払制度」だ。生産者とJAが契約、JAが毎月、月給のようなかたちで所得相当額(平均払額)を支払う仕組みである。畜産物の販売代金から平均払額を差し引き残金は専用口座に留保金として積み立てておく。生産資材費が高騰した場合でもこの留保金からの補てんなどで平均払額を維持する。
生産者にとっては所得を安定的に確保し経営に専念でき、JAにとっては生産資材費の回収が円滑に行えるほか、経営管理によって計画的な畜産経営を継続させる支援にも役立つ。
また、万一生産者が経営中止に追い込まれJAも同制度に関わる損失を被る場合に備えて、(社)全国畜産経営安定基金協会(会長:宮田勇JA全中会長)は損失補てん事業を実施している。畜種別の限度額に基づき同協会とJAで締結した範囲内で損失補てんを行う。JAにとって長期平均払制度に取り組むうえで安心できる仕組みとなっている。
そのほか同協会は平均払事業を実施しているJAを対象に肥育素牛導入事業も実施。これはJAに対して素牛導入資金の一部を信連を通じて1%固定金利で供給する事業だ。JAはこの1%資金と系統資金を1:4の比率で調達する。この5倍協調方式よる資金調達で金利は加重平均で低くなり、それを肥育牛生産者に低金利で貸し付けるか、またはJAの預託事業に活用して素牛を生産者に供給する。また、素牛価格の変動に対応した利子助成の仕組みもある。
最近では金融緩和で金利の上昇が見込まれるなか、改めて同事業の低利融資の有利性が見直され新規に導入するJAもあるなど、畜産経営とJA経営の安定のために関心が高まっているという。
このほか各都道府県農業信用基金協会による生産者の債務保証引き受けをバックアップする畜産経営維持安定対策特別事業も実施しており、同協会ではこれらの事業、資金のJAでの積極的な活用を促進していきたいとしている。
|