『拡大するバイオマス需要への取り組みと課題』をテーマに、第80回の「食・農・環フォーラム」が8月7日、JAビルで開催された。農林水産政策研究所主任研究官の小泉達治氏が“世界のバイオエタノール政策の展開と課題について”、JA全農営農総合対策部長の小池一平氏が“イネを原料としたバイオエタノールの地域エネルギー循環モデルにいて”、それぞれ講演を行った。
小泉氏は、「アメリカでバイオエタノーの生産拡大が進められているが、補助金の多く出る中西部の州に生産拠点が集中している」と、政策が生産拡大を後押ししている実態を説明。「国家安全保障上の観点から、石油の海外依存度の低下」が、バイオ燃料生産拡大の真の狙いだと述べた。今のペースでの生産拡大(原料の90%以上がトウモロコシ)が続けば、将来トウモロコシの純輸入国になるという予測もあり、畜産業界ではそのような事態を危惧する声が広がり始めている。しかし、「トウモロコシなどの食用ではないセルロース系原料からの生産には、いくつかの技術的な問題をクリアする必要があり、簡単ではない」と、2017年までの義務目標年間350億ガロン生産達成はかなり厳しいと語った。
また、世界一のバイオエタノール輸出国のブラジルについて、「8割の工場が砂糖・エタノールの両方を生産しており、原料のさとうきびからエタノール・砂糖への配分は双方の相対価格で決まる競合関係にある。しかし、生産コストは他の生産国に比べてかなり安く、コスト面で優位性を持っている」と語り、現在国内用が85%だが、今後の輸出拡大政策に注目が必要とも述べた。
小池氏は、17年度から実証実験に取り組み、年間1000klのエタノールを製造し、エリア内の40JA-SSでE3ガソリンとして販売する全農の取り組みを紹介。「水田を水田として利用し、耕作放棄地を減らし、地域農業を守ることに取り組む意義がある。エネルギーの地産地消と同時に、米を作ることによる地域農業の活性化をめざしたい」と、全農がバイオエタノール生産に取り組む狙いを強調した。しかし、「わが国では、バイオエタノール生産に関しての法制度や税制がほとんど整備されていないのが現状」と、掛け声ばかりではバイオエタノールの利用促進につながらないと語った。
会場から全農の取り組みに対して、「バイオエタノール生産のコストについて、今後の見通しは」との質問があった。「実証実験が始まったばかりなので、具体的な数値はまだ無い。実用化に向けては省庁間の連携が必要なので、連携を促すよう積極的に働きかけたい」と、小池部長は答えた。
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