中山間地域の再生に向けた政策提言や国民運動の展開などに取り組んでいる中山間フォーラム(会長:佐藤洋平(独)農業環境技術研究所理事長)は8月24日、「ふるさと納税」議論に関する緊急アピールを発表した。
ふるさと納税制度は菅前総務相が今年5月に個人住民税のうちの一部を出身地に納めることができる制度として提案したことから議論が高まり、現在、総務省で研究会を設置して議論されている。
同フォーラムは、この制度を実現すべきとの立場から、制度の議論を通じて「ふるさと」への国民の思いが掘り起こされ、政策や個人の関わり方が議論されるようになることを期待するとして、今回、制度のあり方として2点を提言した。
ひとつは、制度が「ふるさと再生の志ある資金の移転システム」として機能すべきという点。総務省研究会の議論では、同制度をめぐって税制改正か、寄付に対する税額控除かが大きな論点となってきたが、同フォーラムは「どちらでも実現可能なほうでよい」とし、むしろ重要なのは資金提供者の「ふるさと再生への強いメッセージ」が農山漁村に薄れることなく届く仕組みを作り上げることだと強調している。
その一方で、ふるさと再生に向けた志を税・寄付として受ける自治体は、「ふるさと再生ビジョン」とその具体的事業内容をあらかじめ明確にすることも提言した。これはふるさとサイドの「自らの地域を再生しようという思い」の発信であり、資金の利用状況やその効果についても情報還元を行うことが求められるとしている。また、送り手を「ふるさと再生特別住民」として継続的に連携するなど、送り手と受け手の心と心がつながる仕組みとなることが期待されているとアピールした。
同フォーラム理事の小田切徳美明治大教授は「構造改革が声高に叫ばれたときには『ふるさと』という言葉も聞かれなかった。それがこの制度の議論をきっかけにしばしば登場。参院選挙の結果にも表れてるいるように、農山村や地方について何かおかしい、自分でも何かできることはないかという思いが広がっている。その思いを実現させるには、技術論だけでなく制度設計にあたっての哲学が求められている」と今回のアピールの狙いを話す。
総務省の研究会では8月はじめに制度設計の基本的な考え方として、税額控除方式の導入を提示。28日の研究会から納税者の「志」に応えられる仕組みや、使いやすい制度などに向けて議論の取りまとめに入る。
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