ホクレン(ホクレン農業協同組合)子会社でエーコープ経営会社のホクレン商事、エーコープ旭川、同道東、同道央の4社は、来年4月の合併・新会社スタートをめざして、今年6月に“合併協議会”を立ち上げ、現在合併に向けた協議を重ねている。規模拡大による経営基盤強化および仕入等のコスト削減などを主な理由としている。4社の18年度売上額は、ホクレン商事450億円(26店舗)、エーコープ旭川167億円(34店舗)、エーコープ道東70億円(17店舗)、エーコープ道央31億円(5店舗)で、合併した場合、店舗数82、合計売上額は718億円に上る。
◆札幌圏に集中する道内人口
北海道の人口は563万人(18年4月1日現在、以下同じ)。平成7年の国勢調査時には569万人だったが、以後人口は僅かではあるが減少傾向にある。札幌市には道内人口の33.2%の187万人が住んでおり、17年度の増加率は3.2%と増加している。また、札幌市周辺の北広島市、石狩市、伊達市、恵庭市、江別市、千歳市などは道内では数少ない人口増加都市で、札幌市と周辺市を合わせた“札幌圏”に道内人口の4割(41%)を超える人口が集中している。
札幌圏以外では、旭川市35.9万人、函館市29.5万人、釧路市19.4万人、苫小牧市17.3万人、帯広市17.0万人、北見市12.8万人と続いているが、札幌市と比べると人口2位の旭川市でも4分の1以下の人口規模しかない。また、それらの都市でも多くは人口が減少している。道内は札幌圏の人口集中地域とある程度の人口規模がある都市が点在しており、郡部は過疎化・高齢化が進んでいる。
◆大手3グループでスーパー売上の8割強占める
全体の人口が減る中、札幌圏への一極集中が進む北海道では、小売業もその環境に合わせて姿を変えてきた。道内小売大手の「イオン北海道」、「アークスグループ」、「コープさっぽろ」についてみると、すでに組織の見直しや店舗の統廃合を進め、競争力強化に努めてきている。
「イオン北海道」は、イオングループ会社の「ポスフール(旧マイカル北海道)」に、イオンが北海道で展開する「ジャスコ」「スーパーセンター」の11店舗を経営移管し、今年8月21日に新会社としてスタートした。道内30店舗で、札幌市8、旭川市3、その他釧路市、根室市、苫小牧市、室蘭市などで店舗展開している。統合前の3社売上の合計は18年2月期(17年3月〜18年2月)で1812億2000万円。統合後の年間売上は、この規模を上回ることをめざしている。
(株)ラルズと(株)福原が14年11月に経営統合して誕生した「アークスグループ」の店舗数は168。19年2月期(18年3月〜19年2月)の売上は2266億7900万円。札幌圏や中核的都市など道内主要都市に店舗展開している。
また、「コープさっぽろ」は今年3月21日に「コープ十勝」を吸収合併して、道内生協の統合を完了した。店舗数98、18年度(18年3月21日〜19年3月20日)の売上は店舗で1534億円(共同購入を合わせると2130億円)。札幌市28、函館市9、苫小牧市8、旭川市6など人口規模に応じた店舗を設置している。
このように、大手3社は、年間2000億円前後の売上高を持ち全道的に店舗展開を行いながらも、さらに店舗の選択・集中を行うことで、人口密集地区へ力を入れた店舗展開を図っている。
北海道経済産業局調べによると、18年度の道内スーパー(床面積1500m2、売場の50%以上がセルフ方式)の売上額は約6530億円。これは全店ベースで対前年度比4%増、既存店ベースで前年度比0.1%増であった。調査の対象となった店舗数は213。大手3社の売上額合計は、統計年度の違いはあるが約5600億円規模と予想され、18年度道内スーパー売上額の86%を占めることになる。しかし、その中には床面積1500m2以下の店舗の売上も含まれていると思われるので、大手3社の道内スーパーの売上比率はこれより下がるが、かなり高い比率であることに変わりはない。
◆国産農畜産物の販売拠点めざして
このように大手3社による道内スーパーの寡占化が進む中、エーコープ店舗経営会社4社による合併・新会社設立についてホクレンでは、先の理由に加え、生産者の店としてJAらしさを前面に出し、国産農畜産物の販売拠点としたい、と語っている。
道内には4社経営以外にも多くのJA経営のエーコープ店舗があるが、組合員や地域住民の生活に密着した生活店舗としての色彩が強く、ホクレンが進めようとしている道内一体化会社に参加する可能性は低い。
合併をめざしている4社は、大手に比べ売上や店舗数(規模)でかなり差をつけられているため、国産農畜産物をメインとする特色を出すとともに、合併による規模拡大や店舗の統廃合によって同業他社に負けない競争力の強化を図っていこうとしている。
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