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地域合意で農地利用集積を −農地政策改革で農業団体主張 (8/24)


 農地政策改革見直しを検討している農水省は8月24日の「農地政策に関する有識者会議・専門部会合同会議」に見直し案を提示した。農地の流動化についてはいわゆる耕作者主義を基本に、利用権による流動化を促進するため利用権設定促進事業や農地保有合理化事業などを実施してきた。
 しかし、農水省はこれらの流動化策は「離農したい、農地を貸したいなどの地権者からの動きがあってはじめて機能する仕組み」だとし、「財産権を保障され資産保有意識が強い所有者は自ら積極的に動くことはない」と指摘する。そのため担い手の農地の「分散錯ほ」状態は解消せず、耕作放棄地の問題も深刻になっていると現状をみる。
 見直し案で示したのは(1)農地の貸借規制の緩和、(2)耕作放棄地対策、(3)転用許可制度見直しと優良農地確保、(4)面的集積組織による担い手への利用集積など。
 このうち農地の「貸借」については農地を適切に利用する見込みであるときは原則許可とする。一方、「所有」については、農地を適切に利用する見込みであることに加えて、農業生産法人制度であることや農作業従事を要件とする。また、20年を超える長期貸借制度の創設も提起した。
 新たに設置する面積集積組織の仕組みは、現場に積極的に働きかけ代理・委任で農地を集めて担い手に面的にまとまった形で貸し付ける利用調整組織を設置するというもの。原則すべての市町村に設置する。
 支援措置として、地域で推進するコーディネーターを配置したり、新システムへの参加を促すため農地の出し手に対する借地料の嵩上げや担い手に対する借地料引き下げに活用できる参加奨励金を交付することも提起した。また、面的集積された農地の営農を支援する「田畑なおし」や機械施設の整備支援なども実施するという。

◆企業参入自由化に反発

 8月24日の会議では、借地による農業参入が原則自由化される方向であることから、「何のための改革か。企業参入のための規制緩和が全面に出ている」、「企業参入を自由にすれば担い手への面的集積というとベクトルが矛盾する」などの異論が農業者・農業団体委員から相次いだ。
 そのほか「農地を農地として利用するという絵を地域合意でつくるべき。この案では担い手と企業が軋轢をおこしながら農地の集め合いをすることになる」、「面的集積システムには、既存の合理化事業があり、新たなシステムはその補完機能であることを位置づけるべき」などの意見も出された。
 これに対して学識者委員からは「今こそ優勝劣敗の競争原理を導入しないと産業としての進歩はない。所有と利用を分離して真の意味での大規模化を行うべき」との意見があった一方、「『所有は現行規制、利用は規制緩和』では、利用が自由になるとすぐに所有も自由になる懸念がある」との指摘もあった。ただ、財界委員からは「利用権の規制緩和とあわせて所有権も何らかの見直しが必要ではないか」との指摘も出ている。
 そのほか、面的集積組織と現行の農地保有合理化事業との関係についても疑問が出され、「合理化事業を進めている地域では、新たな面積集積組織との整合性をつけるべき」との意見もあった。また、「水田農業の主業農家の割合は3割。それ以外が7割。それら7割を面積集積においてどう位置づけるか検討が必要」との指摘もあった。
 農水省は農地政策改革について秋に大綱をまとめる予定としているが具体的なスケジュールは明確になっていない。

●農地制度体系の見直しの方向案

(権利取得時)

「所有」と「利用」を分離し農地の有効利用を促す観点から貸借規制を緩和。
「貸借」については機械・労働力等からみて農地を適切に利用する見込みである場合には原則許可。
「所有」については農地を適切に利用する見込みであることに加え農業生産法人制度・農作業従事要件を堅持。
20年を超える長期貸借制度を創設。

(権利取得後)
農地の有効利用の継続を確保。耕作放棄地化について発生防止・解消する措置を実施。
耕作放棄地の現状把握、地域での解消計画、状況に応じた処方箋の提示、対応等をきめ細かく全国規模で実施。
耕作放棄地の解消に係る市町村長勧告等の法的規制の発動基準明確化。

(転用)
転用許可制度により農地転用を農業利用に支障が少ない農地に誘導、優良農地を確保。
優良農地確保のため農用地区域からの除外を厳格化。
病院、学校など公共転用について許可対象とするなど、秩序ある農地転用に誘導。
農業振興地域の指定面積、農用地区域への編入要件を見直し、農用地区域への編入を促進。

(その他)
小作所有地制限、標準小作料等の既存規制の廃止、見直し。

【担い手に利用集積するための新たな取り組み】
(集団的な権利移転)市町村や関係機関等による方針に基づいて、新たな「面的集積組織」が地域の農地所有者等に対して貸出を促すための説得、調整などの働きかけを行い集団的な権利移転のための計画を策定して担い手への面的集積を促進。
(望ましい権利移動への誘導=集団的な権利移転に参加しない場合)集団的な権利移転に参加しない所有者が権利の設定・移転をしようとする場合、担い手に優先的に権利設定・移転されるなど望ましい権利移動となるように措置。

(2007.9.18)


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