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パネルディスカッション
左から
福士氏・御船教授・若林教授・中村局長・山下会長 |
日本生協連は、生協法改正を記念して「21世紀の生協に期待されるもの」をテーマーに、9月11日に東京・虎ノ門パストラルでシンポジウムを開催した。
シンポジウムでは、厚労省が設置した「生協制度見直し検討会」で座長を務めた清成忠男法政大学名誉教授が「協同組合の現代的意義」を特別報告。その後、中村秀一厚労省社会・援護局長、御船美智子お茶の水女子大学教授、若林靖永京都大学経営管理大学院教授、山下俊史日本生協連会長をパネリストに、福士千恵子読売新聞東京本社生活情報部次長をコーディネーターにパネルディスカッションが行われた。
清成名誉教授は生協法改正は、「協同組合の重要性を認識し再出発するスタートにすぎない」と指摘。今後の生協の新しい役割として▽公共性―不特定多数の利益、社会貢献▽先端分野に挑戦―企業は採算がとれず行政は後追いとなる地域福祉など▽地域再生に対応―地域社会の問題解決、地域住民の生活の質の向上などをあげた。
パネルディスカッションで御船教授は、生協の持つ事業体、消費者、組合員・生活者、共同・協働・協同の実践者、社会的発言者という5つの側面を統合して「くらし創造と生活社会の構築」が期待されるとした。とくに「商品」では、事業体(起業・経営)面と消費者という側面のコミュニケーションが安全・安心へつながると指摘した。
若林教授は、生協ブランドが確立され「信頼・安全が期待されている」が、そこには「組合員の参加」があったことを指摘。今後の事業展開では、購買事業で個配から先へ新しい事業が展開できるのか、店舗事業で経営確立ができるのかが課題だとした。そして共済事業は新しい事業の柱だが、保険とは異なる「助け合いビジネス」が問われていること。福祉は地域社会に求められているニーズであり、これに生協がどう応えられるかが課題だとした。
そのうえで、事業が広がり大きくなった生協のガバナンスのあり方が最大の課題だとした。福士氏も巨大化と細かな地域へのサービスをどう両立させるかが今後の大きな課題とした。
行政の立場から生協法改正に携わってきた中村局長は、「生協って何?」「戦後の物資窮乏の時期はともかく、CVSやスーパーが発達した今日、生協の使命は終わったのではないか」という国会議員などから質問を受け、生協について改めて考えてみたところ、1980年代以降の生協の大きな発展を支えてきたのは、主婦層を中心とした人たちが「自発的に、出資し、利用し、運営参加する」ことにあった。「これが現在も、将来も生協を支え続ける基本コンセプト」だとした。そのうえで「このモデルがこれからも通用するのか気になるので、検討して欲しい」と語った。
商品開発などに組合員が直接関与する機会が少なくなり「運営参加」のあり方が問われる一方で、1人当たり利用が減少傾向にあるという。そこに相関関係があるのかどうか、中村局長の懸念は検討の価値があるのではないだろうか。
山下会長は、法改正は生協の社会的役割が評価されたことであり、そのための規制緩和だとしたうえで、新しい法制度を運用しきり応分の社会的責任を負うことを要請されていると語った。そして「法改正を受け、社会経済の担い手として、新しい社会経済システムに貢献していきたい」と今後への抱負を語った。
会場には新聞などで一般公募した約100名の聴衆はじめ生協関係者など220名が参加し、熱心にパネリストの話に聞き入っていた。
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