第25回全農酪農経営体験発表会が9月14日、JAホールで開催された。体験発表会は県連等から推薦された酪農経営者を選定表彰し、その優秀な経営内容等を関係者に紹介し酪農経営の安定に役立てることを目的に毎年開かれている。
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◆6名が先進的な取り組みを発表、経験の共有が必要
全農西馬場茂参事は、「19年度の計画生産については、18年度に引き続き減産型となる一方、飼料価格の高騰などで酪農経営を取り巻く環境はたいへん厳しい。そのような状況のなか、6名の先進的な取り組みは大変参考になる。我々はその経験を学び共有し、現場で活かしてより良い経営をめざさなければならない」と、体験発表会から酪農経営の改善につながるヒントを得てほしいと語った。
6名は、千葉準一(青森県)「地域に密着した酪農経営をめざして!」、松本武徳(沖縄県)「常夏の島での酪農経営−酪農の有段者をめざして−」、須貝耕治(群馬県)「もう一歩先をめざした酪農経営(移行期・必乳前半ステージの牛に優しい管理)」、宮崎恵美子(高知県)「愛する牛たちと共に育んだ、我が家の酪農」、大原健(北海道)「一つぶの汗からの実〜みのり〜」、比嘉勝(宮崎県)「どげんかせにゃいかん!」まさるの挑戦、の順に一人約30分の持ち時間で発表した。
日頃感じている改善点や将来実現させたい夢などを、写真や図表などを使いながら分かりやすく会場に訴えた。遊休農地を利用した粗飼料の増産、耕畜連携などによる生産性向上と同時に、計画的な設備投資などのコスト削減に取り組む6名の発表は、厳しい環境の中でも、ひたむきに酪農に取り組む姿を聞くものに強く印象づけた。
また、今回は節目となる25回目であるため、将来酪農をめざす高校生、大学生に酪農に関する夢を語ってもらう『酪農の夢』コンクールを実施した。最優秀賞には鳥取県立倉吉農業高等学校生物生産科3年生の板持真侑さんが選ばれた。酪農家の家に生まれ、両親の仕事を手伝う中で、将来獣医になりたいとの希望を持つようになった。大学に進学して獣医になり健康な牛を育て、自分で生産した美味しい牛乳を多くの人に飲んでもらいたいと思うまでを、高校生らしい希望に満ちた表情で発表した。
◆生産調整に対応しながら高乳量・良乳質めざす
体験発表後、審査委員長の堀尾房造元農水省中国農業試験場長から結果発表と講評があり、最優秀賞に大原健氏が選ばれ、他の5名が優秀賞、宮崎恵美子氏が特別賞に選ばれた。
堀尾氏は、「今年の発表者は粒がそろっていて甲乙つけがたく、審査員一同大いに悩んだ」と、6名のレベルの高さを称えた。6名の発表から、特徴的な6点を指摘した。▽飼育頭数を減らし生産調整に対応しながら、乳量増大や乳質改善などに努めている。▽設備投資に慎重で、財務の健全性に力を注いでいる。▽全員大規模経営だが、いずれも法人経営ではない。経営の継承を考える上では将来法人化も視野に入れることが必要。▽半分の人が和牛の受精卵移植によって子牛の繁殖を行い、経営の安定を図っている。▽自給飼料の生産に力を入れている。▽総所得は、ほとんどが1000万円以上だった。最高は大原さんの1942万円、所得率は例年よりも若干悪く、最も良い大原さんで28%、10%台の人もおり、この点の改善が必要だ。
最優秀賞の大原さんについては、安定した乳量と良乳質である、飼料生産基盤が充実している、牛舎の増改築や新築、ふん尿処理施設整備など投資が計画的に行われていること、2世帯4人の家族労働で経営と生活が無理なく行えていること、などを評価し最優秀賞となった。また、特別賞の宮崎さんについては、徹底した個別管理で高い乳量を維持している、1Kgあたりの生産原価は62円台と低い、ふん尿処理では完熟堆肥を作りトンあたり3000円から5000円で販売している、などが評価された。
今回は、高校生、大学生を対象とした全国学生『酪農の夢』コンクールが行われたこともあり、会場には例年になく高校生など若い人の姿が目に付き、華やいだ雰囲気の中で体験発表会が行われた。
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授賞の喜びを語る大原健さん |
発表後インタビューを受ける板持真侑さん |
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