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食べ物に捨てる所はない、と語る小泉武夫氏
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『農水産廃棄物の再利用と環境の浄化』をテーマに、農林水産政策研究所主催の講演会が10月10日、同研究所客員教授で東京農業大学応用生物科学部教授の小泉武夫氏を講師に農水省7階講堂で約300名を集めて開催された。
小泉教授は長年の微生物に関する研究から、微生物が人間にとっていかに有用な働きをするか、有用な微生物を人間がいかに活用するかを分かりやすい例をあげながら語りかけた。「わが国の食料自給率は39%(カロリーベース)です。世界一食べ物の無い国が、世界一食べ物を捨てており、9割を超す自治体では、生ごみを焼却している」と、本来は資源である生ごみを、お金をかけて処分している現状は、非常にもったいないと語った。“生ごみは宝”であるとの逆転の発想が必要で、微生物の助けを借りて生ごみからたい肥を作り、そのたい肥から質の高い農産物を作る取り組みを紹介し、「お金のかからないことがリサイクルを広く普及させるためには重要で、食べ物に捨てるところはない」とリサイクルの必要性を強調した。
また、世間の注目を集めているバイオエタノールについては、「まず人が食べる食料を作るべきであって、食料を犠牲にして燃料を作るべきではない」と、食料よりも燃料を優先させることに懐疑的で、トウモロコシ、大豆などの穀物からよりも、木屑など他の生物資源からエタノールを作ることに努力を傾けるべきだと語った。ただ、その場合でも、製造過程で多くの化石燃料を使用することから、環境に優しいとは言えないのでは、とバイオエタノール製造が抱える矛盾を指摘した 。
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