苫小牧市の食肉加工卸会社・ミートホープ社の「牛ミンチ」偽装事件は、日本生協連加盟生協を含めて食品業界に対する消費者の不信感・不安感を高めた。また、このなかでJAS法上では、食品の業者間取引では品質表示義務がなく、これほど社会的に大きな問題となったにもかかわらずミートホープ社に対してJAS法に基づく措置が行えないという法規制の欠陥も明らかとなった。
そのため農水省では「食品の業者間取引の表示のあり方検討会」を設置して、「食品の業者間取引について、JAS法の品質表示義務の適用の可能性を含め、表示のあり方」を6回にわたって検討してきた。
10月31日に開催された第6回検討会では、最終製品のみの規制では「表示の正確性を確保できないことが明らかになった」とし、消費者の信頼を回復するためには、「全ての加工食品に生鮮食品と同様、原料供給者との取引について表示義務を課し、抑止力を高めることが適当である」と、業者間取引においても表示を義務化するとりまとめ「JAS法の品質表示の適用範囲の拡大について―『食の安心』に対する消費者の信頼回復に向けて」を確認し公表した。
表示の仕方は「容器・包装、送り状等に加えて商業上用いられている書類(規格書)」への記載も表示として認められるとしている。
これを受けて農水省では、来年4月1日の施行を目指して法改正に取り組んでいくことにしている。
ミートホープの田中稔元社長らは不正競争防止法違反(虚偽表示)で送検されているが、北海道警は11月7日に詐欺容疑で追送検した。詐欺罪(10年以下の懲役)は虚偽表示(5年以下の懲役または500万円以下の罰金)より重い罰則となっている。
食品の表示については、その後も次々と違反が明らかになっている。検討会のとりまとめでも「正しい食品表示を徹底するためには何よりも事業者の意識改革が重要であり、事業者のコンプライアンスの自主的な取組が不可欠である」と指摘。「企業のトップが率先して法令遵守の姿勢、消費者重視の経営方針を打ち出していくことが望ましい」が、食品製造事業者は中小企業が大半を占めるので、企業におけるコンプライアンスを促進するためには「業界団体の積極的な支援が期待される」とした。
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