民主党は今国会に提出した農業者戸別所得補償法案について総額1兆円とする補償金の試算を11月29日に発表した。
民主党が法案に基づいて構築しようとする農業者戸別所得補償金は、販売農業者交付金と中山間地域などを対象にした生産条件是正交付金を組み合わせた仕組み。
このうち販売農業者交付金は、標準的な生産費と販売価格の差額を補てんする「補償交付金」と転作や品質、環境保全などへの加算部分からなる。
米の場合、補償する米価水準の考え方として、生産費のうち(1)物財費、雇用労働費、支払地代など実際の支払い相当分は全額算入、(2)自己資本利子、自作地地代は算入せず、(3)家族労働費は8割を算入、との考え方を示した。
この考え方に基づき、16〜18年産の米生産費から算出された補償する米価水準は60kgあたり1万3560円となる。
一方、標準的販売価格はコメ価格センターの入札価格から包装料、消費税などを差し引き、さらに流通経費(3000円)を差し引いた価格とした。今年9月末現在の平均入札価格1万4464円から包装料、消費税などの平均額と流通経費を控除した額は1万539円で補償する米価水準との差額60kgあたり3021円が補償交付金の単価だとした。
単収を530kgと想定すると面積単価は10aあたり2万6685円となる。試算では米の販売量を700万トンと仮定した場合の作付け面積は132万haとなり、米に対する補償交付金総額は3525億円とした。
一方、小麦、大豆、菜種など自給率向上のため生産拡大が必要な作物の補償交付金単価の算定では、家族労働費を全額算入するという。
試算では小麦の場合、補償交付金単価は畑作では10aあたり3万820円、水田転作では3万6280円となっている。
ただし、水田転作では、補償交付金を含めた米の10aあたりの所得と、小麦、大豆などの作付による家族労働費全額との差額を転作導入交付金として上乗せする。水田転作で小麦を作付けた場合には、10あたりの補償交付金と転作導入交付金を合わせると6万1000円を超える水準で、大豆、菜種についても同4万8000円程度の水準となる。
民主党は作付け面積を小麦50万ha、大豆54万ha、菜種20万ha規模を前提に米の補償交付金も含めた総額は8487億円と試算、このほかにてん菜、でん粉原料用ばれいしょへの支払い、飼料作物・そばへの支払い、また、経営規模拡大や品質、環境保全への加算と中山間地域直接支払い制度の予算も含め総額1兆242億円になると試算した。
民主党の筒井信隆ネクスト農相は今回の試算は「法案提出者の試算」であり、家族労働費の算入割合など算定の条件はそのときの政策判断での変更もあり得るとした。また、財源については参院選向けマニフェストで示した15兆3000億円規模の予算枠組みの見直しから措置するという。
同制度の対象となる農業者について、法案提出者の平野達夫参院議員は生産費と販売価格に差がある作物を作っている農業者で、それらを販売をしていれば面積規模は「10a以上」と述べたほか、10a未満であっても市町村特認ができる仕組みにしたいと話した。
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