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菅野貴夫さん
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小澤智美さん
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『第4回農業用生分解性資材講演会』(主催:農業用生分解性資材研究会・坂井久純会長、以下「ABA」)がさきごろ、東京都江戸川区のタワーホール船堀で開催された。今回は、特に要望の強かった現地の使用状況実態などを報告した。
同研究会は、平成16年8月に農業用生産資材の分野において、生分解性樹脂を使用した資材についての開発・利用・普及を推進していく目的で設立された。
農業用生分解性資材、特にマルチフィルムにおいては、この3年余で2倍以上に普及面積が増加している。しかし、ポリマルチとの代替はまだ2%未満と見られている。
代替に加速がつかない背景には、普及・啓蒙の不足、フィルム使用の安心感、コスト高などが指摘されており、普及に向けた積極的な活動が求められている。
生分解性プラスチックは、製品のライフサイクルを終えたのち、自然界に存在する微生物により二酸化炭素と水に分解されることから、環境負荷軽減材料として農業資材や土木建設資材用途として主に使用されている。
例えば、作物の栽培時に土の保温や雑草抑制などを目的に使われる農業用マルチフィルムは、使用後に人力で回収する必要があり、かなりの重労働を強いられていたが、生分解性プラスチックのマルチフィルムを使用すると、土中の微生物により分解されることから、その回収の手間が省ける利点がある。
北海道の普及状況は現在、生分解性マルチが10%程度、同ネットが6%程度となっている。生分解性マルチが使用されている作物の中で一番多いのが「南瓜」で、南瓜のマルチの作付は90%を超えている。内20%が生分解性マルチを使用している。
今後の取組として「根気の強い啓蒙活動、生分解性資材の性能を充分に発揮できるポイントの精査、価格差の圧縮」をホクレン施設資材部の菅野貴夫さんは挙げた。
いっぽう、長野県では現在、生分解性マルチへの取組はレタスやハクサイのほか、キャベツ、グリーンボール、ブロッコリー、カリフラワーなどの葉洋菜類、スイートコーン、ジュース用トマトなどで試験・実用利用されている。
「ナビオ」(製品名)や「キエ丸」(同)などの利用が多く、特に「ナビオ」はJA全農長野が主体となり、長野県仕様の生分解性フィルムを開発するという意図で、メーカーと共同で進めてきた。
野菜花き試験場の小澤智美さんは、「低価格化、長野県の野菜生産に適した資材の検索、マルチ以外の農業用途、他分野での利用拡大、一般市民の認識向上、安全性に関する情報の開示」などを今後の課題として指摘した。
なお、ABAでは『生分解性マルチの普及マニュアル』、『生分解性マルチフィルムを正しくお使いいただくために』を発刊している。手元に置いておきたい。
〈問い合わせ先〉
農業用生分解性資材研究会
〒103−0004 東京都中央区東日本橋3−6−17(山一ビル)
(社)日本施設園芸協会内 電話(03)3667−1631
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