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現場では「出向く活動」が着実に拡大している
(16日・横浜市内で)
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JAの営農経済渉外員が農家の庭先へ出向く活動をさらに強化しようとJA全農は11月16日、横浜市内で「JAグループ出向く営農経済活動パワーアップ大会2007」を開き、全国から関係者240人が参加して経験を交流。担い手支援の強化に向けた出向く体制の整備や、課題解決型の活動推進などを確認した。大会は05年から毎年開いている。
営農経済渉外活動をしているJAは222、渉外員は約2000人(3月末)。この取り組みが担い手支援体制の基盤となって、この3年間で担い手対応部署を設置するJAは292(9月末)となった。
全農の神出元一常務はこうした情勢を報告。「出向く活動は着実に拡大しており、課題も明確になっている」とした。
また「担い手対応支援システム」の活用を訴えた。これは出向く先の担い手情報を登録、共有化するもので、事業を担い手基点の提案型に変えていくツールだ。システム導入JAは359、登録農家数は11万4600にのぼる。
来賓あいさつでは農水省協同組織課の石井俊道課長が「出向く先を選り好みしないで、取引の少ない組合員のところへも積極的に出向くべきだ」とし、また「担い手対応のJA担当者を孤立させないようにJA経営陣の認識をもっと高める必要がある」と提言した。
大会では5JAの営農経済渉外担当者らが活動事例を報告した。
その中では「顧客満足度」とか「顧客管理」など、組合員を「顧客」とし、渉外員を「営業マン」とする一般企業なみの用語がすんなりと抵抗感なく使われていた。
しかしJA職員から営業マンへの変身は難しい。知らない組合員の家やほ場には行きにくい。相手にされないのではないかとか、難しい質問が出たらどうするかなど渉外員たちはおっかなびっくりで出向く活動を始めた。こうしたスタートの状況は5JAに共通していた。
商系の営業マンはどんどん農家に飛び込んで肥料や農薬などの商品提案をするが、JA職員は共済の推進などを除いて、ほとんど組合員訪問をしなかったのだ。
事例報告では、訪問を重ねるうちに、出向く活動を歓迎する組合員の声が広がっていったという。
JAは組合員の意見が通らない組織だと思っていたが、渉外員に要望したら、すぐに実現した▽苦情への対応が早くて助かった▽補助事業を紹介してくれた▽JAの広報誌は隅々まで読まないため渉外員がきて知らせてくれる情報は有難い、などの声が報告された。
また出向く活動で営農相談と農業資材の事業量を拡大し、とくに肥料のシェア拡大で成果を挙げている事例、数多くの集落営農を特定農業団体以上の組織に育成している担い手対策の事例、「担い手対応支援システム」の活用事例など多彩な活動報告が相次いだ。
まとめではJA全中の松岡公明氏が「個別農家の農協離れが進む中で集落営農までが資材購入先を商系に切り替えるようなことになればJAの事業量がごっそり減って大変なことになるといった危機感をバネに、組合員・担い手から選ばれるJAになろうという活動が展開されている」とした。
しかし「ものを売らんかなの渉外でなく、まずは御用聞き、あるいはクレーム処理からスタートする事例が多い。そこから相手のニーズを聞いて課題解決に向かっている」という流れを指摘。
また課題といっても家族それぞれに例えば子どもの教育問題なども抱えているから、その家でT番の悩み事・心配ごとを発見し、「それに対するJAからの提案をすることが大事」と提案型の活動を強調した。
大会は最後に全農営農総合対策部の小池一平部長が、出向く活動の対象者を顧客としてとらえ、その「生産者の視点で事業施策を考える」という「課題解決型の営業」を展開していくことなどを提起した。
活動事例の報告者は次の5氏
群馬・JA利根沼田営農経済渉外課 綿貫利光課長
三重・JA三重四日市経済渉外係 野誠係長
滋賀・JA甲賀郡担い手支援室 松本忠嗣考査役
岡山・JA倉敷かさや矢掛営農センター営農課担い手担当 田尻直人氏
熊本・JAやつしろ経済渉外課 野中貴史課長
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