農業協同組合新聞 JACOM
   
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農林水産関連の雇用創出ねらう
〜「地方再生戦略」の農山漁村活性化対策−農水省


 構造改革を進めるなかで生じた地域間の格差の問題については、「地方再生」への構造改革を進めて行くー。
 福田内閣は平成19年10月1日の内閣総理大臣の所信表明演説で、国民が安全で安心して暮らせるよう「希望と安心」の国づくりに取り組むことを表明した。全閣僚からなる地域活性化統合本部会合で、地方再生のための総合的な戦略とりまとめを急いでいたが、11月30日に「地方再生戦略」としてとりまとめた。この戦略では、地方を地方都市、農山漁村、基礎的条件の厳しい集落(限界集落)の3つに分け、活性化のための戦略を示した。
 農山漁村対策では、農林水産業の再生と豊かな暮らしの実現をめざす。限界数落では、集落の生活機能を維持し、国土保全、水源維持などの面で最前線の機能が果たせるようにする。
 農山漁村の高齢化・過疎化が進み、65歳以上の割合は平成7年から17年までの10年間で全国では15%から20%に増えた。中山間地域では都市より高齢化が進んでおり、22%から27%へと増えた。平成17年の人口の増減率は、都市的地域では0.2%増えたが、中間農業地域では0.7%、山間農業地域では1.3%減った。
 耕作放棄地は平成2年に21万6785haだったが、平成17年には38万5791haと増え続けている。鳥獣の被害も止まらず、平成18年には被害額196億円余りで、畑が荒らされたり、農作物が収穫前に食い荒らされるなど、農業の多面的機能も低下している。
 地域の経済状況や雇用の格差が大きく、平成16年の1人当たり県民所得は、3大都市圏で332万円、地方圏では264万円だった。平成19年9月の地域別有効求人倍数は東海1.57、北関東・甲信1.23に対し、北海道1.57、東北・九州0.74と格差が大きい。
 農水省は、地方再生戦略に反映させるための「農山漁村活性化のための戦略」を11月21日に決定し、「地方再生戦略」と同時に公表した。
 悪条件を克服し、”新たなむら”を再生する農山漁村活性化の手順は、まずは農山漁村集落を再生し、さらに地域経済の活性化をめざすこと、とした。地域の基盤となる農林水産業の活性化対策の柱として、新たな地域協働の形成中山間地域等条件不利地域への支援地方活性化の取り組みの全国展開の支援、を掲げた。
 地域経済の活性化のための戦略で最も重要な課題としているのは、農林水産業に関連した雇用の創出だ。農山漁村で雇用の機会を広げ、農外収入の増加や、就業への道を開く。20年度から文科省、総務省、農水省が取り組む「子ども農山漁村交流プロジェクト(20年度にスタートし、平成26年には全国の小学5年1000万人が農山漁村に宿泊する構想。宿泊施設の運営などで起業、雇用のチャンスが創出できる)、高齢・小規模農家、有機栽培農家などの多様な主体が活躍できる農林水産直売所などによる地産地消や農地の有効利用の推進などをめざす。
 農水省はさらに、各省連携で雇用を創出する。経産省と農商工連携を強化し、雇用創出を中心に地域経済活性化に取り組む。新商品開発・販売促進のほか、バイオ燃料の生産を促進するため、原料生産を行う農林漁業者と燃料製造業者を法的に支援することを検討する。国産バイオ燃料は平成23年度5万kl、22年にバイオマスタウン300地区を目標にしている。また、国交省との連携でグリーンツーリズム等の観光の促進、グリーンツーリズム商品等の情報発信、農林漁家民宿の質・量両面での拡大をめざす。

(2007.12.7)

 

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