農水省は12月21日、農政改革3対策緊急検討本部の会議を開催して、米政策改革など3対策を決定した。8月29日〜10月5日にかけて地方キャラバンなどで聞いた営農現場の声を反映させたほか、先の与党による20年度予算・19年度補正予算編成に向けた農政対策とも連動させた。
◆面積要件など緩和
品目横断的経営安定対策については、制度の基本は維持しつつ、地域の実態に即した見直しを行う。加入に必要な面積が、認定農家4ha(北海道は10ha)、集落営農20haの基準に満たない場合も、新たに市町村特認制度を設け、20年度からの加入の道を開く。現行の知事特認は実施が皆無なので廃止する。認定農家の加入条件を65歳以下としている場合でも、地域で担い手として認められ、意欲があれば高齢者に年齢制限を適用しない。集落営農組織は5年以内に法人化する義務があるが、5年以上かかっても認める。
手続きが複雑、煩瑣との指摘に応え、申請手続きは簡素化し、毎年書き直す必要がなくなる。農家への交付金の支払いは、農協が立て替えて時期を一本化し7月頃に支払う。19年産麦については年内に前倒しで支払う。
制度の用語がわかりにくいため、用語を変更する。「品目横断的経営安定対策」は北海道向けは「水田・畑経営所得安定対策」に、都府県向けは「水田経営所得安定対策」とする。「ゲタ」は北海道向けは「麦・大豆等直接支払」、都府県向けは「麦・大豆直接支払」とする。「緑ゲタ」(過去の生産実績にもとづく交付金)は「固定払」、「黄ゲタ」(毎年の生産量・品質にもとづく交付生金)は「成績払」とする。「ナラシ」は「収入減少補てん」、「経理の一元化」は「共同販売管理」とする。当分の間は新旧両用語を併記するなどして現場の混乱を避ける考えだ。
新規の予算措置も行う。単収が増えている先進的な小麦、てん菜産地を支援するほか、19年産以降麦の豊作で、は種前契約数量を超えた場合も支払いの対象にする。19年産米で万一収入の減少が10%を超えても、10%を超える部分に対しては農家の積立金の拠出なしに補償する(10%までは農家が既に積み立てている)。20年産以降は10%以上の積み立てを農家が行うことができるようにする。集落営農に対しては、リーダーの活動費、リースによる機械・施設の整備費などを支援する。
◆生産調整品目に「新規需要米」を新設
米の消費が毎年9万t減るなかで生産調整の未達で過剰米が発生しているため、生産調整を実施しやすい仕組みに改善する。
19年産で大幅な過剰作付けになっている都道府県・市町村などとは、必要な場合、国が生産調整目標達成合意書の締結を行う。生産目標数量の都道府県間調整を20年1月10日までに行うこととし、米の生産目標を減らして大豆、麦などの生産を増やす県には、産地づくり交付金をトン当たり11万円加算する。米を増やす県にはトン当たり4万円を減額する。しかし、米の生産を減らす県がない場合は調整は成立しない。
飼料米、バイオエタノール米などの新規需要米は、生産調整品目として新たに認める。
生産調整実施者にメリットを与えるため、20年産から「地域水田農業活性化緊急対策」を実施する。農家が地域水田農業推進協議会との間で「長期生産調整実施契約」(5年契約)を結んだ場合は、麦、大豆、飼料作物などによる生産調整の拡大分に対して10a当たり5万円(19年産目標達成者)、3万円(19年産目標達成者以外)を交付する(1農家100万円が上限)。また、非主食用米の低コスト生産技術の確立試験に取り組む場合は生産調整拡大分に対して10a当たり5万円を交付する(契約期間は3年)。総額は500億円で、19年度補正予算で確保された。
目標未達成となった都道府県、地域へのペナルティは、目標配分、作付け、収穫などの20年産の生産調整のステージごとの推進状況、達成状況を見ながら決めることとした。ペナルティは、20年産の産地づくり交付金を交付しない、21年産の各種補助金、融資などで不利な扱いを受ける、などが考えられている。
生産調整の主体である生産者団体としての農協には、行政と連携して取り組むよう要請する。農協の生産調整非実施者からの米の集荷については、生産目標数量の範囲内で締結された出荷予約数量の範囲内の米と、それを超える米とで引き受けや価格について差をつけても原則として問題がないことを周知する。生産調整非実施者から集荷している集荷団体・販売業者には、非実施者から集荷をしないよう要請する。
農地・水・環境保全向上対策については、申請・報告手続きと確認事務を大幅に簡素化する。これによって全国1万7000の活動体の事務量が軽減される。
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