全農は新生プランの取組みを具体的に生産現場に伝え、現場での課題や要望などを直接聞き、それを事業に反映させるために「全農・元気な産地づくりミーティング」を昨年10月から全国で開催してきている。
3月23日にJA全農岐阜県本部が開催したミーティングを取材するととともに、全国の状況をまとめてみた。 |
◆もっともっと情報を
青年・女性組織代表と意見を交換 岐阜
3月23日に開催されたJA岐阜青年部連絡協議会(青年協)・岐阜県JA女性連絡協議会(女性協)との「全農・元気な産地づくりミーティング」では、青年部からは「新生プランとその進捗状況を見せてもらい素晴らしいプランだと思った。JAを通じてわれわれに伝わってくるときには、情報が少ない。せっかくいいことをしているので、情報をもっともっと伝えて欲しい」 「JAに出すより個人でインターネットなどで販売する方が価格が良い。ブランド化するなど販売方法をもっと考えてもらいたい」 「認定農業者としてかなり大規模に営農している。最初は担い手としてキチンと評価されると思っていたが、最近は自分ではなく、集落営農を担い手とよぶ方が強いと感じている。将来に向かってどこを担い手として評価し伸ばしていくのか」
女性部からは「JAの事業を全面的に支援していかなければいけないと考えている。県下全域で食農教育活動を展開しているが、安全・安心な食品としてAコープマーク商品を推奨している。全農の商品の紹介や食品知識を知る機会をつくって欲しい」 「空き田んぼ(遊休農地)をJAで管理して欲しい。300軒あったイチゴ農家が30軒になってしまった。なんとかできないのだろうか」 「大根はどこでできるのか? と聞くと、ジャスコとかイトーヨーカー堂と答える子どもがいる。食農教育として、プランターで野菜栽培ができるようにし、学校に配ろうと考えている」などの意見がだされた。
◆積み重ねていくことで、もっと近くに
当日は、神山肇委員長をはじめ青年協から3名、矢嶌生子会長はじめ女性協から12名が出席。全農岐阜県本部からは、堀尾茂之県本部長、桑原一義、酒向邦彦両副本部長をはじめ7名。県本部のJA経済事業改革本部幹事会の林忠義幹事長(JAひがしみの専務)、販売事業員会の後藤孝司委員長(JAいび川専務)、購買事業委員会の岩佐澄男委員長(JAひだ専務)。さらに県中央会の久富定幸専務と木全孝農政部長が出席した。
堀尾本部長が「新生プランについてご理解をいただくと同時に忌憚のないご意見を頂戴して、今後の事業に活かしていきたい」と挨拶。酒向副本部長が、岐阜県本部の事業内容と新生プランの概要およびこれまでの進捗状況を説明。その後、桑原副本部長の司会により会議が進められ、青年協・女性協の出席者から、冒頭のような意見がだされ、堀尾本部長らが今後検討していくものを含めて回答した。
会議の終了後、岩佐購買事業委員長が「全農が“もっと、近くに”を、初めて実践した」と語ったように、全農から積極的に生産現場の意見を聞く初めての試みとして成功したのではないだろうか。堀尾本部長は「貴重なご意見をいただき、多くの課題がだされた。これからも回数を重ねていきたい」と閉会の挨拶で語ったように、この日をスタートに今後もこうした試みを積み重ねていくことが大事だと出席者の間で確認された。
◆全国35県域79組織から意見を聞く
昨年10月11日のJA全国女性協、19日の全国青年協そして30日の(社)日本法人協会を皮切りとして始められた「全農・元気な産地づくりミーティング」は、県域ごとに青年部・女性部、日本法人協会や県域農業者組織との間で実施され、現在までに35県本部・79組織約1000名とのミーティングが開催されているという。
昨年12月末に26県域58組織の730名とのミーティングがされた段階で全農がまとめたところによると607件にのぼる意見が出されている。
それによると、新生プランに関連する意見が約4割、系統経済事業全般にかかる意見が約6割となっている。組織別でみると、青年組織(46.4%)と法人協会など(41.8%)と比べて女性組織では29%と新生プランに対する意見が少ない。
また、新生プランに対する意見を同プランで掲げる5つの使命別にみると、「使命1・担い手への対応強化」が41%、「使命2・生産者・組合員の手取りの最大化」26%、「使命3・消費者への安全・新鮮な国産農畜産物の提供」5%、「使命4・生産者・組合員に信頼される価格の確立」27%、「使命5・JA経済事業収支確立への支援」1%となっている。
意見の内容をみると、賛同・支持する意見が10%、現状への不満があるものの期待や提言が50%と全体の6割が好意的な評価をする意見となっている。
事業別にみると全農改革やJA全般に関わる意見が27%、営農対策が23%、肥料・農薬や生産資材関係が21%、耕種の販売に関する意見が19%などとなっている。
さらにこれらの意見を問題領域別に分類すると、事業対応の充実40%、取引条件の改善25%と、全体の65%が事業の魅力度向上を求める意見となっている。このほか、全農の事業改革や系統の組織運営に関する意見が17%、農業現場の実情や苦労を訴える意見が11%、人材育成や人的対応の充実を求めるものが7%となっている。
◆期待が高い生産物販売への対応
これらの意見を詳細に読んでいくと生産資材価格についても厳しい意見があることも事実だが、「全農・JAに期待するのは、販売の強化である。1円でも高く売ってもらいたい」「生産費の引下げだけでなく、生産物を高く売る施策がみえない」「特別栽培された米や園芸作物の差別化された販売をお願いしたい」「全農として産地間調整、売り込みをしっかりやって欲しい」「統合して有利な販売をして欲しい」、「JAグループの販売事業はリスクをもたない。産地間競争をして価格を下げているようでは産地は育たない。全農に期待するのは販売の強化」「全農は農産物のイメージをアップしながら、販売を拡大できる体制を構築して欲しい」など、販売に関する期待や不満の声が多いことが目につく。
安全・安心な農畜産物を求めるニーズが高まり、ポジティブリスト制の施行、生産履歴記帳やトレーサビリティの実施など、農業サイドに求められるものが多くなっているが、輸入農畜産物の増加や消費の低迷などによって、米価をはじめ農産物価格が低迷しており、生産者の手取りを確保するためには、なによりも生産物を確実に安定的な価格で販売することが求められているからだろう。
◆丁寧で分かりやすい対応を
全国各地で出された意見は多岐多様にわたっているが、こうしたミーティングを全農自らが全国で実施するのは初めてのことであり、そのことを「良」とする意見が多いことも事実だ。
出された意見は、全国域で対応するもの、県域で対応できるもの、JAが対応した方がいいものがあるが、いずれにしても、できるもの・できないもの・時間はかかっても対応していくものなどを明確にし、丁寧に分かりやすく返していく必要がある。
そして全農改革を理解してもらい、全農を「もっと近くに」感じてもらうためには、こうした試みを1回だけで終わらせるのでは、継続し積み重ねていくことがなによりも大事だということを岐阜のミーティングを取材し、出席者と話す中で感じた。
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