|
「飼料価格の高騰、卵価の低迷そして鳥インフルエンザの三重苦によって、養鶏産業は過去にない危機的な状況にある」(梅原宏保日本鶏卵生産者協会長)。
危機の最大の要因は飼料価格の高騰にあり、18年10月から今年の1月までに5回値上げされ、累計値上額は1万5600円に上る。今年1月の値上はトン4000円強でさらに4月にも値上げが予想されるという。
一方卵価は、昨年は1kg168円(JA全農たまご・東京M基準値)と史上最低だった15年以来の安値となり、今年の初市も115円の暴落相場で始まり、その後回復はしているが135円と依然低価格で推移している。
このままの価格で推移すれば、飼料のみならずダンボール・鶏卵パックなどの資材価格や輸送運賃なども軒並み値上がりしており、鶏卵1kg当たり45円、卵1パック(10個入り)当たり27円のコストアップとなり、業界全体では1100億円の赤字になると、日本鶏卵生産者協会では試算する。
鶏卵は戦後60数年間ほとんど価格が変わらず、物価の優等生といわれてきた。しかも鶏卵の自給率は農畜産物の中で唯一90数%を維持し、国民1人当たり年間消費量は320個と世界最高水準にあり、国民の誰もから身近で良質で安価なタンパク質として親しまれてきている。
しかし、この危機的な状況が続けば、国産鶏卵の安定的な供給は不可能になる可能性もある。
こうした状況を打開するために、日本鶏卵生産者協会は、▽自主的繰上げ淘汰の促進(生産調整)等により鶏卵需給バランスの回復を推進▽養鶏業界の窮状を国民に訴え理解と支援を要請する▽政府・国会に養鶏産業救済のための緊急対策を求め、「養鶏危機突破緊急全国生産者大会」を2月12日、東京・永田町の海運ビルで開催した。北海道から沖縄まで全国から400名の生産者が参加した。
大会では「生産者の自主的努力によって鶏卵需給バランス早期回復運動の推進」「国民・消費者の理解と支援で国産鶏卵の基盤を守る運動を推進」することを決めるとともに、政府・国会に当面の生産者の経営維持のための緊急対策として次のことを要請することを決めた。
1.国の保証による500億円規模の融資の実現
当面つなぎ資金として「家畜飼料特別支援資金」が発動中だが、都道府県農業信用基金協会の信用保証が十分に機能せず、生産者が必要とする資金の融資を得るにはほど遠い状況にあるため、国の保証で融資を早急に実現して欲しいということだ。
2.卵価安定基金基準価格の早急なる大幅引き上げ
現在の基準価格は166円だが、生産コストが大幅にアップした状況を反映したものにはほど遠いこと。基金財源は300億円近くあるにもかかわらず、苦境にたつ生産者の経営安定に資する補てんを実施できずにいるので、本来の機能を果たすために早急に基準価格を引き上げることを要求している。
3.配合飼料価格安定基金財源の充実・強化
今後も飼料価格の高騰が続くことが予想されるので、国の支援で十分な財源を確保することを要請する。
4.飼料米生産の推進と飼料原料輸入先の多元化
飼料価格の高騰は、飼料原料の大半を米国に依存している日本養鶏の構造的弱点からきていると分析。今後の飼料原料価格および量の安定・確保をはかるために、飼料米生産の推進で飼料自給率を向上させるとともに、東南アジアからのくず米輸入により原料輸入先の多元化をはかることを要請していくことにしている。 |