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日本産米の輸出状況検討 −農水省の検討会


 農水省総合食料局長のもとに設置されている「販売」を軸とした米システムのあり方に関する検討会(座長:八木宏典東京農大国際食料情報学部教授)はこのほど開催した検討会で日本産米の輸出状況を検討した。
 近年の東アジア地域における経済発展などを背景に、日本産米の輸出は増加傾向をたどっている。昨年は数量ベースでは台湾や米国向けが不調で、前年を下回ったが、金額ベースでは前年を2割程度上回った。国別では、台湾が5割以上のシェアを占め最大の輸出先だ。香港、シンガポールが続いており、アジア諸国への輸出が中心になっている。
 平成18年の輸出数量は967tで金額は4億2700万円だった。昨年は11月分までで数量は770t、金額では4億4000万円だった。小売価格は、市場によってばらつきがあるが、キロ当たり1000〜1200円の価格帯が中心。販売店は日系百貨店、スーパー。台湾や香港では市場に定着しているが、産地間の競合が激しくなっているという。

◆中国向け輸出昨年4月に開始

 平成19年4月の大臣級協議で、検疫条件(精米工場の指定、くん蒸処理の実施)の基本合意がなされ、JA全農が6月に第一便として24t(新潟産コシヒカリ、宮城産ひとめぼれ)を輸出、7月から北京、上海で販売し、北京で8月中旬、上海で9月下旬に完売した。中国での日本産米の小売価格は新潟産コシヒカリが2kgで198元(3200円)、宮城産ひとめぼれが同188元(3000円)。購買層は中国人富裕層の贈答用・家庭消費用、企業贈答用、在留邦人用など。価格にはあまりこだわらない例が多いという。
 継続協議となっている恒常的輸出に向けた検疫条件については、平成20年3月末までに解決するとされており、それまでの間、150tまでの輸出が可能になった。全農は昨年12月下旬と今年1月下旬に合計100t輸出した。
 全農は平成18年1月に、JA全中が平成16年から取り組んだ輸出業務を受け継ぎ、総合企画部に輸出チームを配置して実務を開始した。輸出先は香港、シンガポール、台湾、タイなどの東アジア。現在は米穀事業部が総合企画部の輸出対策室、全中等関係者と連携して取り組んでいる。中国に輸出した第2便は先週末から販売を始めた。
 全農が取り扱うJAグループの輸出精米は、平成16年産米より日本産のトップブランドとして「JA-RICE」と命名し販売してきた。日本食ブームもあり、当初のターゲットである邦人向けの高級百貨店での販売ニーズに加え、高級日本食レストランや寿司店など業務用のニーズも増えているという。
 輸出用の包装形態は東アジア向けは無洗米の真空パック、中国向けは通常の精米袋だ。16年度以降の「JA-RICE」の販売実績は、平成19年11月まででシンガポール132t、香港110t、台湾34t、中国24tなど合計309t。シンガポールでの「JA-RICE」のシェアは平成19年度で52%。香港は日本料理店中心の需要。台湾は多くの日本産米が輸出されていて、飽和状態になっている。中国向けは百貨店を中心とした販売からスタートしたが、今後販売ルートの拡大が必要だという。
 商流・物流は、原料玄米は通常の販売ルートで全農から全農パールライス東日本へ販売し、全農は製造された精米をパールライス会社から買い取って、輸出業者として貿易会社へ販売する。輸出実務は全農の子会社の(株)組合貿易に業務委託し、通関手続き、貿易会社との代金決済などを行っている。

◆中国向け幅広いマーケティング必要

 東アジアでは、全農は現地法人や富裕層向けの店舗にはほぼ参入済みという。地域によっては、他業者の新規参入もあり、販売は全体的に頭打ちの状態だ。このまま過当競争が続くと、価格値下げにつながりかねない、と全農では分析している。
 東アジアでの量的拡大は、日本食レストランなど業務用の販路拡大策が必要。また、現地販売価格の見直しや、2kg入り「JA-RICE」仕様以外に5kg入りの米袋による販売の検討も必要で、おにぎりの販売なども考えられるという。中国向けは、今後幅広いマーケティングによって、量目の柔軟な対応、玄米での輸出、ブレンド米の開発、無菌米飯パックなどの販売方法が必要という。北京、上海以外の都市への拡販もねらう。
 米の輸出をきっかけに、野菜、果物の売り込みにつなげることも、日本産農産物の輸出拡大にプラスになる。
 消費者をしっかりつかんで、日本米需要を安定させるためには、今後多くの課題がありそうだ。

(2008.1.29)

 

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