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農地の維持管理、農協子会社で〜規模拡大は収支面で限度ある
−農水省の検討会で現地の事例 (2/15)


 農水省総合食料局に設置されている「販売」を軸とした米システムのあり方に関する検討会(座長:八木典宏東京農業大学国際食料情報学部教授)は、2月15日第8回検討会を開き、前回に引き続き生産現場の事例を聞いた。招かれたのは(有)グリーンパワーなのはな(富山県)、JA大分のぞみ「たまごのおこめ部会」(大分県)、農事組合法人やまだアグリサービス(秋田県)。
 グリーンパワーなのはなは、JA組合員の「農地を安心して預けられる組織の設立を」という要望に応え、13年前にJAなのはなが97%を出資して作った子会社。農家からの農地委託要請は全て引き受け、現在192haに達している。
 生産品目は面積の7割が水稲で、他に大豆、野菜を組み合わせ、農協施設の利活用でコストを5%低減した。米の半分は販売先との契約栽培で、コシヒカリは60kg当たり通常出荷分の500円高。黒米(雑穀米)は60kg当たり3万円。もち米(新大正)は60kg当たりコシヒカリの2000円高、米以外でも減農薬大豆を契約栽培で60kg当たり500円高など、実需者と結びついた有利な販路を開拓した。
 従業員は正社員10名と臨時20名。正社員は年間雇用で、人件費を得るため農閑期に庭木の剪定など「便利屋」をしたり、自社生産の焼き芋を直売所などで販売する。しかし、これでも収支はきつく、今年度は赤字転落の見通しという。大きな原因は米価の下落。米価が60kg当たり1万5000円だった一昨年までは10a当たり2000円ほど利益が出ていたが、1万2000円となった今は、米だけでは採算割れという。無条件で農地を受託しているため、効率性が劣る面もある。また、規模が100haを超えると作業がそれぞれ専任になり、従業員が増えて経費増になる。
 委員からは、「高齢化等で今後農協が農地の維持管理をして行くことが予想されるが、その場合はグリーンなのはながモデルになろう。しかし、収支が償えないのは大きな課題だ」との意見が出ていた。
 JA大分のぞみの場合は、平成8年頃、当時盛んだった養鶏での鶏糞や鶏卵の殻の再利用のため、水稲の元肥としたのがきっかけ。一般米より香りが良く、冷めてもおいしいのがセールスポイントになった。平成15年に部会を設立、19年産の生産者は141名、72haの規模だ。JAが全量を買い取り、販売している。販売先は主に県内の外食産業などと学校給食。量販店向けは欠品の問題もあり、手がけていないという。
 たまごのおこめの生産費は一般米に比べ元肥代が安いなどで、13%ほど低い。販売価格は60kg当たりで5000円高だが、収量は1割以上落ちる。10a当たりの販売額は一般米の20%以上だ。毎年食味検査や品質検査をして平準化につとめている。
 規模拡大は投資が収益をカバーできず、品質の平準化にも支障があり、限度があるという。

◆年間雇用の人件費確保に複合経営、作業受託など

 やまだアグリサービスは平成15年に設立。規模は40ha(利用権設定)で、米は7割の面積で作付けしている。従業員は6名で、臨時は年間延べ615名。元は大豆生産組合だったので、大豆の生産受託も引き受け、68haを管理している。学校給食用にたまねぎ、じゃがいもなども生産。米の販売はJAへの出荷を主力に、販売業者や病院、老人ホームへの独自販売も。米市場の先行きが不透明なので、将来の道をさぐるため、卸業者と直結したり、酒米の売り込みで灘や伏見にも行く。
 米の生産コスト低減は、規模を拡大しつつ直播栽培や省力化でおこなっている。生産コストはkg当たり195円。60kg1万1700円。稲作の余剰労働力で複合経営を実践。平成18年度は野菜価格高と大豆の高品質加算金の交付を受け、売り上げが2割増だった。規模が一定の面積を超すと、コストが下がらなくなるので、これ以上の低減は無理という。
 平成18年度の総収入は約1億2400万円で、このうち米の売り上げは3400万円(27%)ほど。他作物の複合経営や、直売所の経営、ヘリコプター防除の受託、諸交付金などが63%。当面は60haへの規模拡大をめざしている。

(2008.2.19)

 

 

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