「食料の未来を確かなものとするために、どのような課題に取り組むべきか」、について検討している農水省の「食料の未来を描く戦略会議」(座長:生源寺眞一 東京大学大学院生命科学研究科長・農学部長)は1月15日農水省で4回目の会議を開き、国や農業団体、国民など、それぞれが何をなすべきかについて課題を整理した。
若林農水大臣は「小麦の価格が史上最高値を更新するなど、世界の農産物がひっ迫状態にある。中国が今年始めから輸出税を課したり、輸出規制を行うなどの新たな動きもあり、将来的にさらに穀物価格が上昇する懸念が強い。将来に渡って安心して暮らすために、食料の確保に向けて課題にどう取り組むか、考えていく必要がある」と挨拶した。
農水省は、食料の未来を確かなものにするためには、政府、農業生産者・農業団体、食品製造・流通・外食関係業者、国民など関係者がそれぞれの課題に取り組むことが必要だとして、次のような提案を示した。
【政府】
食料や農業についての国民の認識度を高めること。
食料自給度の向上に向けて、関係者の取り組みを支援すること。
輸入の安定化、多元化、備蓄の確保、不測時に備えた体制整備を進めること。
【食品製造・流通・外食関係事業者】
国民に食の大部分を提供することを認識し、原材料や製造過程などに信頼確保を求める消費者の願いに的確に応えること。
消費者の信頼確保のため、適正な表示を行うこと。
【農業生産者・農業団体】
限りある農地を有効に利用すること。
安全性、新鮮さ、おいしさの点から国産農産物を求める消費者の願いに応えること。
外食や中食が国産農産物に求めるニーズに応えること。
【国民】
世界とわが国の食料問題に関する認識度を高めること。
米を中心とした日本型食生活により、健康を守るとともに、国産農産物の消費を増やし、地域や環境を守ること。
食べ残しなどの大量の食品廃棄を抑制すること。
子供達の健全な成長のため、食育の重要性を理解し、実践すること。
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委員から出された質問、意見には次のよなものがあった。
▽19年産米価はなぜ下がったか。
▽米作農家は米を作りたくても価格が原価を割ったのでは作れない。大規模米作農家ほど破産が早い。
▽正しい情報をキチンと国民に提示し、国民が責任を感じるようにした方が効果がある。
▽食生活の変化をもとに戻させるのではなく、変え難い原点としてとらえ、対策を講じるべき。
▽都道府県ごとに自給率が違うので、どのようにして危機意識を持たせるかが課題だ。
▽小中高などに学校農園を持たせて、農業生産をさせたらどうか。教職課程に農業体験を必須科目にしたらどうか。
▽自給率より自炊率を高めるほうが食への関心が高まる。
▽生産者の立場で食の未来を描く場合、自分は何をもって貢献するかを考えていく必要がある。
▽耕作放棄はどうしたらなくなるか。
▽地方農政局に出向いた人に、じっくり腰を落ち着けて農政をやってもらうべき。
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若林農水大臣は締めくくりに「いろいろな角度があり、どこから取り上げるか難しいところだが、輸入価格が上がり、それを消費者が負担せざるを得なくなるなど、リスキーな状態が高まると見込まれる。おいしいものを楽しく食べる環境をどうやって作るかの切り口が必要だ。国内でできるものは国内で作るという共通認識を持ってもらうためにも、食育などの教育が大切だ」と述べた。
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次回(3月に開催予定)は最終回となるので、国民に向けたメッセージを簡潔で分かり易く、インパクトのあるものにまとめることとしている。 |