農水省の食料・農業・農村政策審議会畜産部会(部会長:鈴木宣弘東京大学大学院農学生命科学研究科教授)の第2回会合が1月29日に開かれ、畜産をめぐる一般情勢について意見交換した。
委員の主な意見は次のとおりで、農水省は「本日の議論は、今年の畜産価格等の諮問案作りに生かして行く」とした。
北海道加工乳地帯の委員は、昨年(19年)の決定価格は18年度のデータに基づいたものだったが、「19年度中に飼料・燃料代が高騰し、基金の補てんを受けてもなお経費負担が持ち出しになった。所得減を借り入れ増でまかなったのが実態だ。20年度期中に経費がどのぐらい上がるか、どう対応するかの議論が必要だ」と述べた。
乳業メーカー側委員からは、来年の乳価アップに応じることとしたが、「原資の確保が必要だ。小売価格の値上げに頼らざるを得ないが、消費者の理解を得られるよう、政府のバックアップをお願いしたい。牛乳の消費は3年以上連続で減っている。新製品の開発に力を入れていくので支援を」との意見が表明された。
養豚農家委員からは養豚は若い後継者が多いので、先が見えるようにすることが必要で「飼料米の見通しはどうなるか。食物残さの飼料への活用(エコフィード)は良い物ができているが、流通形態が大型車(20t)向けになっており、個人農家は利用しづらいので改善を」と要望が出された。
JA全中の冨士常務は次の点を強調した。
飼料原料や原油の高騰は、昭和50年代の畜産危機に匹敵するので、従来の背景とは違うという認識で対応策を考えるべきだ。価格転嫁のバックボーンとするためにも、指定食肉安定基準価格をできるだけ引き上げてもらいたい。加工原料乳生産者補給金、肉用子牛生産者補給金も適正に引き上げるべきだ。盛り込めるものはできるだけ盛り込んで引き上げてもらいたい。さらに、期中に生産コストが上がる場合は、途中での改善をしてもらいたい。
政策価格は価格下落に備えた制度だが、今はコストが上昇しているので、制度設計の背景が変わってきた。畜種別の経営安定策を考えてもらいたい。加工原料乳生産者補給金といったバックボーンのない都府県飲用乳地帯向け対策も必要。配合飼料価格安定制度の財源確保策が必要だ。飼料価格が上がれば補てん金が出るが、高止まりすれば補てんされない。その際どうするのか、検討しておく必要がある。
飼料用米をどうするのか、国としての位置づけを願いたい。(18産米10万tの飼料処理、20年産生産調整への組み込みなど)昨年の対策は一過性のものなので、世界の穀物の需給状況のなかで、わが国の飼料生産振興策を中長期的な視点で考えるべきだ。
◇
農水省は、配合飼料価格安定制度は、他国に例をみない制度なので、大切にしていきたいとして、「大きな財源を要するので、安易な見直しはできないだろうが、今の制度を基本にして、今後の動向をみながら対応していきたい。飲用乳価格については、飼料価格のコスト上昇を踏まえ、来年度の計画生産への取り組み方向を踏まえ、どのように支援したらいいか十分検討したい」などと答えた。
|